事業成果を出す組織を作るのブログ

リーダー育成失敗の本質

コロコロ変わるリーダー像

とある企業様に対して、リーダー教育のためのご提案をしています。そちらの企業様は、近年組織が100人規模に急拡大したことから、組織を盤石にするために大きな予算を割いてリーダー層に対して教育投資をされているとのことです。地方中小企業ですが、ここまでリーダー育成に投資しているのは非常に素晴らしい取り組みで、リーダー育成の難しさをよく理解されているんだなと思いました。

どこの企業でもリーダー育成に失敗された経験はあるかと思います。もしかしたら、ずっと失敗が続いてしまっていることもあるかもしれません。リーダー育成をしたいと考えた時、真っ先に手を伸ばしてしまうのが「研修」かと思います。リーダー層を集め、外部から講師を招き、1日かけた研修を半年に1回行う。定期的な意識付けにはなりますし、現場から離れて現在の自分のチームを見つめなおす時間を設けることは無駄ではないでしょう。

ただし、育成を本気で成功させたいと考えるならば、順番を考える必要があります。下記の図で示すとおり、リーダー育成はステップをすっ飛ばすとうまくいきません。まず、経営層が「どのようなリーダーを求めてるのか」を定義付けし、経営層や育成実行部隊の中で共通認識として持つところから始まります。実は、これが年によってコロコロ変わってしまい、選抜者が毎年のように変わってしまう企業も多数見受けられます。

リーダー育成失敗の本質の一つ目はここにあります。「経営層が数年我慢してでも育成したいリーダー像」を共通認識を持つ必要があります。具体的に人を名指ししてもいいでしょうし、要件をあげてもいいと思います。御社に一番マッチするリーダーの要件、他社の人材との差別化要件を経営層が自覚するということです。

ファーストステップの要件定義は、最初にがっちり固めてしまうのではなく、走り出してから少しずつ修正をかけてもいいと思っています。また、人材育成は長期戦ですので、社会的なスタンダードが途中で変わってしまうということもあるでしょう。実際、リーダーに求められる資質は変化しています。がむしゃらに日本人が働いていた時代は「業績達成」「予算達成」を求められ、効率が重要視されていました。一方的な部下への働きかけです。現在ももちろん売上向上はリーダーの責任ではありますが、それ以外にも部下との信頼関係構築・コミュニケーション・人材開発など、チームマネジメントが求められてきていると実感します。

 


リーダーになれる人材は限られている

リーダー育成失敗の本質二つ目は、リーダー候補人材のポテンシャルの見誤りです。

今までの日本社会は、適性がない人でも年功序列という形で何らかのポジションを与えてきました。適性よりもその会社に深く根差し、その会社について十分理解していることに重きを置いたのです。年功序列・勤続主義の昇給は労働者が勝ち取った権利であり、これに関しては日本に誇る素晴らしい制度であったと思います。しかし、現代は先述のとおりマネジメントの難易度が上がっている。業績を追いかけるだけのリーダーではチームは回らなくなってしまっています。

私の個人的な意見ですが、リーダーに向いているかどうかは入社時点である程度決まっていると思います。それは、性格面の影響が非常に強いからです。例えば、発言しない大人しいタイプの人がミーティングを引っ張っていけるようになるにはかなり時間がかかります。そもそも本人のやる気の要素も大きく、よく一般的に言われるように人を変えるのは非常に難しい。リーダーシップを渇望していない方にトレーニングをしても効果は薄いと思います。

そのため、リーダーになれる人材(どの程度のレベルのリーダーになれるか)を見極めなくてはいけません。ここで道を誤ってしまうのが、「リーダーに必要な素質」は「優秀な部下である素質」とは若干異なります。「上司の言ったことを正確に実行できる力」と「チームをけん引して目標を達成する力」は実は全く別物です。それは、経営者とNO.2人材の性格が異なることを見ればわかると思います。

しかし、「昇格」というものは現在のリーダーから評価されて初めて候補として名前が挙がります。つまり、「いい部下」が昇格していく仕組みになっています。となると、いつまで経っても参謀タイプとリーダータイプが見分けられません。実は、上位の役職まで上がってしまった人の中にも意外と参謀タイプの方も多く、リーダーシップを部下に発揮するのが苦手な方も見受けられます。

また、部下を評価する際、リーダーは自分と似た人を選びます。自分自身が成功事例ですから、成功事例に則ることは人選以外の場面でもやりがちです。このやり方をやっていると、現在のリーダーの下位互換のような方が選ばれていき、組織に新しい風を吹かせることはできません。VUUCAと呼ばれる先行き不透明なこの時代、現在のリーダーが未来のリーダーの最適解とは限りません。むしろ、現在の会社全体に不足している部分から逃げずに向き合い、補ってくれるようなリーダーを育てていくことをする会社が生き残っていくのでしょう。社外にアセスメント(人材評価・分析)を依頼することは一つの策になります。

いかに次のリーダーをポテンシャルから見極めるか。社外に目を向け、社会の流れに沿った人材をピックアップできるか。ここが2つ目の要となります。

 


「経験を積ませる」の責任は誰がもつ?

リーダー育成失敗の本質の最後は、責任の所在がないことだと思います。

リーダーの選抜が終わると、次はどのような経験を積ませるかを計画し、対象者に経験を付与していきます。経験の付与は2つのパターンがあります。一つ目は現在の部署で今よりも負荷のかかるプロジェクトのリーダーを任せる、もう一つは経験を積むことができる部署異動をさせる、この2つです。

そして、どちらにせよ「経験を積ませる」場合、定点観測をする人・部隊が求められます。育成失敗しているときは、この「経験を積ませる」ことをその部署の上長に丸投げしているケースがほとんどです。すると、誰が責任をもって育成するかが分からなくなってしまい、育成されている状況が放置されてしまうことが多々発生します。それで「育成がうまくいかない」と悩んでいるのは非常にもったいない。必ずプロジェクトとして推し進め、責任を受け持つ人・部隊を置きましょう。

これは1つ目の失敗の本質にもつながりますが、実際に育成を任される現場の上司に育成すべきリーダー像が共有されないことも大きく影響します。人は放っておいたら自力で成長することは難しく、上司からの手助け・引き上げがあって初めて階段を登れるようになります。しかし、育成する上司側から考えてみてほしいですが、ただ育成計画を立てさせたり、ただ育成を任せるだけではこの上司に当たる人は何もモチベーションがありません。さらには、上司自身が異動・退職してしまうと育成プロジェクトの熱意を引き継ぐことは難しいでしょう。そのため、育成協力を上司側に説明し、上司のミッションに組み込むようにします。上司自身が評価される仕組みも有効でしょう。

さらには、選抜者本人にも意識付けが必要です。どのくらいの期間で、ここまでレベルアップしてほしいと会社側が期待を示すのです。「経験」という機会を付与していること、その機会を無駄にしないでほしい旨は何度も伝えなくてはいけません。これはモチベーションを上げるための意識付けですが、モチベーションを下げない工夫も必要です。「経験を積ませる」の多くは泥臭いことを経験が多いかと思います。自分のやっていることを見ていてくれるのか、中長期的に評価してくれるのかが気になる点ですので、上司が誰に報告するのかが明確に見える方がよいでしょうし、例えば上司が変わるなど不安要素が強くなる状況でも外部からの定点観測があれば、安心することができます。

 

以上の内容は管理職育成を想定しています。中小企業は限られた従業員数で成果を出し続けなくてはいけません。①まず育成人材の目標(リーダー像)を据える ②リーダーを担える人材を見極める ③経験を積ませている間の定点観測 この3つの本質を間違えなければリーダーは必ず育成できると言えます。これらは自社で具体的な育成内容はまた記事にしたいと思います。

 

書籍紹介(組織デザイン)

<書籍情報>

■書名:組織デザイン

■著者:沼上幹

■出版社:日本経済新聞出版社

■どんな人向けか:組織の骨格を組み立てたい方、組織開発のハード面を学びたい方、分業と調整について学びたい方

 


事業成果を出す者は分業を制する

今回ご紹介する書籍は「組織デザイン」(沼上幹)です。

本屋さんで書籍を探してみると、組織の骨格や構造について端的にまとめられている本が少ないことがわかります(意外とこの分野の研究者が少ないのかもしれません)。そんな中、本書は新書であるにも関わらず組織構造について非常に詳しくまとめられています。本書の内容は、他の「組織論」や「経営論」の本に度々登場し、またか!?というほど引用されています。組織構造の章がまるまる本書の内容だったりするくらい超有名なので、すでにお持ちの方も多いのではないでしょうか。一冊読むだけで組織のハード面について網羅的に学ぶことができますので、組織開発初心者から玄人まで必読の一冊です。

さて、私がこの本を手に取ったきっかけは「組織構造」と「分業」の関連性に気づいたことにあります。現職で一部上場企業に勤めていますが、そこでは数年前から社長肝いりの企画が多数始動していました。社長指針を刷新したり、現場からボトムアップの形で小さな改善を活性化させるような取り組みを導入したりと、経営者が組織を活性化させようとしている雰囲気が社内に広まっていました。これは良い取り組みである一方、社長自身は自分の想いが社員の末端まで行き届いていないことを課題に感じていたはずです。人事として会社全体の組織改編を取り扱う中で、本当に今の組織形態が一番効率の良い形なのだろうか?人事として新しい形を提案できなくてよいのだろうか?と疑問を持つようになりました。

「組織構造」と「分業」は密接に関わっています。しかし、この対応を蔑ろにしているリーダーが意外と多く、チーム成果が出せていない組織ではこのどちらか(もしくは両方)がうまく機能していません。これは大所帯の企業も少人数チーム(私は3人からがチームだと思っています)も本質は同じです。崩れていく組織は布陣が曖昧なのです。なぜ従業員が自分の方針を理解してくれないのか、なぜ従業員は非効率に作業を進めてしまうのか、なぜ従業員同士がすぐもめてしまうのか…実は「組織構造」と「分業」が大混乱している証拠なのです。

最終的に作業や情報が滞りなく組織の末端まで流れていくことがめざすべき形です。そのために経営者やリーダーがやるべきことは何か。まずは「組織の骨格を再設計する」ことです。言い換えると、組織図を描き起こせるようなチームの状態を作ります。これは組織を牛耳る者しか担うことができません。いくらメンバーが組織の形を整理したいと思ってもできないのです。

企業はチームです。事業が伸びている企業は「分業」がうまく機能しています。自然発生的に機能しているのではなく、経営者が分業での成果の出し方を知っているのです。つまり、チームで成果を出す者は「分業」を制していると言えるでしょう。

 


ボトルネック工程を見つけ出せるか

本書は分業の理論的な考え方について学べる良書です。その中で読んでいて感じることは、分業は水のようだということです。作業工程を「フロー」と呼ぶくらいなので、まさに水の流れそのものです。

作業工程もスタート地点からゴール地点へと流れていきます。その過程で、詰まっているところ=一番時間がかかるところがあると途端にフローは滞ります。これをボトルネック工程といいます。皆さんもチームで仕事をする際に、「分担がうまくいかないな」と悩んでしまう箇所はないでしょうか。担当者同士がもめていたり、マンパワーが必要だったり、なぜこの作業をやっているかわからなかったり、そういう箇所や部署はまさにボトルネックなのです。

ボトルネック工程を排除することはできませんので、本書ではボトルネック工程の取り扱い方についても教えてくれています。

 

①ボトルネック作業があまり重要でない作業・部署だった場合 → 作業や存在自体をいかに小さくするか/注力するか/効率化するか

②ボトルネック工程が重要部署・重要作業だった場合 → 周りの作業を効率化し、いかにリソース(時間・優秀人材)を突っ込むことができるか

 

これができるかどうかだけでも組織の動きは全く変わってきます。本書で繰り返し述べられているのは、「ボトルネック工程と非ボトルネック工程を仕分けしてください」ということです。あなたの企業・あなたの組織が抱えている作業や案件を全て棚卸する必要があります。これは、片付けの手法と非常に似ています。片付けコンサルタントの近藤麻理恵(こんまり)さんが提唱されているこんまりメゾッドでは、まず部屋の中央に家の中にあるすべてのものを集めてきて、カテゴリごと(書類・衣服・本・小物など)にどれを残すか選別していくそうです。まさに、工程の棚卸もこの作業と同じことをします。

やり方が分かれば自分で片づけられる人もいれば、片付けコンサルタントに依頼して短時間で一気に片づける人もいます。「組織構造」と「分業」の整理も、短時間で一気に済ませてしまいたい場合は外部へ委託されることをお勧めします。ボトルネック工程が抽出できた後は、リソースの分配まで一気通貫で構築することが可能です。

また、片付けと組織整理の違いは、複数の人や部署が絡み合う点です。自分で決めればよいわけではなく、都度担当者のヒアリングが必要になります。何も聞かずに断捨離されたら現担当者は自分の人格を否定された気持ちになり怒り出す。つまり、気持ちにも配慮しながら進めなくてはいけない非常に繊細な作業です。事業を進めながら組織を整えるのは、難易度がかなり高いことが分かります。

事業が進んでいく中で組織について立ち止まれるか、飛躍するための準備期間を設けられるか。事業の成功は「組織構造」と「分業」を機能させる作業に掛かっている。本書を読んで痛感した気づきでした。

 

 

 

従業員との対話、苦手としていませんか?

対話が苦手な経営者は多い

経営者の皆さんに従業員とのミーティングに要している時間を伺うと、意外と確保されていないことに驚きます。

経営者の方は事業に情熱を持って取り組まれています。事業と向き合うことについては、得意な方が多いと思います。一方で、従業員への関わり、とりわけ「事業を展開するための対話」という点においていえば、見てみぬふりをしているパターンが多い気がします。

とある経営者の方は、従業員の生年月日と兄弟構成から、従業員全員の性格を占いで出してあると仰っており、占いで算出した性格表を手元に置きながら、従業員面談を実施しているとのことでした。そして、占いを導入した結果、「従業員面談の時間を削減することができた」と喜んでいらっしゃいました。占いを導入している賛否は置いておくとして、「対話時間を削減した」ことはいい方向にいかないのではないかと私は予測しています。

経営者の方から「組織がまとまらない」「同じ方向を向いていない」という課題はよく伺いますが、経営者からの発信時間が圧倒的に少なすぎることがあります。その要因は、①経営者の方が従業員に伝えたい理念や事業への想いを言葉にしていない ②対話に時間をかけても効果が得られなかったので辞めてしまった

この2点が当てはまると思っています。

もし、チームとして成果を出したい場合、分業は避けられません。つまり、従業員を信用し、自分がやるべき仕事を移譲していく必要があります。そして、組織を整え、自分の方針を従業員に落としていきます。これは経営者に近い経営層だけではなく、末端の事務員まで、組織の中にいる全員にいきわたらないといけないのです。リーダーからの発信と従業員とのすり合わせの時間は、栄養を全身に運ぶ血液と言ってもよいでしょう。

対話不足は栄養が行き届いていない状態です。陥ってしまったら、やるべきことの一つは「従業員のチーム化」。組織が成熟するまで待つのではなく、経営者主導でチームになるべき要素を整えていく方法です。詳しくは、ブログの別記事にまとめていますのでご参照ください。

なぜあなたの組織はまとまらないのか

 

 


リーダーシップとは「コミュニケーションのタイミングの上手さ」

対話不足の組織でやるべき対策、もう一つは「リーダーシップの見直し」に解決のヒントが眠っています。

事業を成功させる「リーダーシップ」、私の個人的な意見としては「=コミュニケーションのタイミングの上手さ」だと思っています。

「コミュニケーション」というと、雑談や朝礼からメール共有、ミーティングや面談までさまざまなツール・規模のものが対象になります。小さい会社で社長室がないような企業様だと、フロアで従業員といつも顔を合わせるし業務上のコミュニケーションは常に取っている、さらに飲み会は盛り上がるとなると「うちの会社は問題ないよ」と認識される方が多いのはないでしょうか。経営者様ヒアリングのためのアンケートにおいて、「コミュニケーション」の過不足を分析すると、大体の経営者は「問題ない」と回答されます。

しかし、もし感覚的に「従業員がついてきている感じがしない」と違和感を覚えている場合、残念ながらその感覚は当たっていると思います。

何が起きているのかというと、感覚で感じるということは従業員側が面と向かって言えない不満や要望が溜まっている状態です。言葉で言えないので態度に出している。はっきりとではありませんが、それを何となく経営者が感じ取っているのです。最近あの人なんかそっけないな、なぜかわからないけど反応が鈍いな、など。このようなノンバーバルな反応を察知している段階は、経営者と従業員の信頼関係にヒビが入っている状態です。

これが、言語化されて言葉で不満が出てくるようになると実は手遅れ一歩手前の状態です。言葉として不満が噴出する状態は、ヒビではなく断絶になります。こうなってしまったら、事業を前に進めたいと思っても組織を一から立て直す方に時間を掛けなければなりません。

つまり、「言葉として不満が出てきたら対応しよう」と思っていたら遅いわけですね。ここが、マネジメントが上手い(リーダーシップが上手い)方は、違和感をそのままにせず、自分の感覚を拾って対応しています。その違和感がいずれ大きな亀裂になることが分かっているからです。反対に、うまく組織を回すことができない経営者の方は、それをスルーしてしまっています。

私は、経営者の進みたい道を従業員全員に納得してもらったり、不満を持つ人を根絶する必要はないと思っています。そうではなくて、「経営者が何を考えているかわからない」ことに不満を持たれることを極力ゼロに近づける。これが、リーダーシップが上手くいく秘訣かなと思います。あの人の方が給料が高いのはなぜか、あの人の方が大きな案件を任されるのはなぜか、私の仕事がなくなるのではないか、そういう些細な不明点が聞けず、不信感につながるのです。

組織を定点観測していると、おのずとメンバーの違和感が見えてきます。経営者の方には「コミュニケーションのタイミング」、これをキャッチアップできる感覚を磨いて頂ければ、組織を変革していくことはできます。

 

 

なぜあなたの組織はまとまらないのか

チームとして機能していないという経営の悩み

ご連絡頂いた企業様と無料相談を実施しています。

ご相談頂く内容で多いのは、「組織がまとまらない」という悩みです。「新しい事業に取り組みたいが従業員が納得していない」「同じ方向を向いている感じがしない」「自分一人で成果を出している」など。「チームで成果を出す」とは程遠い状況に経営者の皆様は悩まれています。

従業員数がまだそこまで多くはない中小企業におかれては、従業員と経営者との距離が近いため、より密接なやり取りが必要になります。従業員がついてきていない、というのが肌で感じ取れてしまうんですね。職人気質な風土だから、寡黙な性格の人が多いから、年配の人が多いからとは言え、経営者の方向性を従業員が理解している組織であれば、「まとまっている」「伝わっている」という感覚は感じることができます。逆に言えば、自分の組織に感じた違和感、残念ながらその感覚は当たっていると思います。

このような状況下で無理やり事業拡大を行ったり採用強化を図り組織を拡大させようとすると、たちまち組織が崩壊します。従業員の離職が止まらなくなったり、従業員との溝がより深くなってしまいかねません。このような時には、従業員サイド/経営者サイドの両方からの改善施策が必要です。今回は経営者サイドからの課題を挙げてみたいと思います。経営者の方は耳が痛いと思いますが、確認して頂ければと思います。

 

いくつか要因はありますが、大きなものとしては①リーダーシップの問題、②組織の問題があります。

①リーダーシップの問題については、ヒアリングの中で従業員と経営者の間に溝があることがよくあります。昨今様々なリーダーシップの在り方が提唱されていますが、経営者の方は私はリーダーシップとはコミュニケーションだと思っています。もっと具体的に言うと、”対象”と”タイミング”と”量”です。このどれか一つでもずれてしまっていると、リーダーシップは失敗します。つまり、組織を引っ張れている状況ではないということです。

経営者の方で、意外とリーダーシップの出し方に失敗してしまっている人がいます。優秀な経営者=優秀なリーダーとはならないのです。ここが事業と組織のバランスの難しいところです。いくら事業で面白いことが思いついたとしても、やりたい方向性が見つかったとしても、資金調達が上手くいったとしても、事業を膨らませるのは「人」なのですから、「経営者」は「リーダー」へシフトしていく必要があります。

こちらについては、別でブログとしてまとめたいと思います。

 


組織を強化するための仕掛けを仕込む

チームがまとまらない原因②「組織の問題」について解説します。

まず大前提として押さえて頂きたいのは、チームは個人の集まりです。従業員は入社したらすぐにチームの一員になるわけではありません。ここも意外と見落としがちです。目の前に事業としてやることがある、従業員がそこに取り組んでいる、これだけで安心してはいけないのです。

チームというものはどのように形成されていくのでしょうか。「組織設計概論」(波頭亮)によると、組織を構成する要素は下記の3つの”S”です。「Structure(組織骨格)」「System(制度・規則)」「Staffing(人員配置)」です。

・「Structure(組織骨格)」

組織図を作るというハード面の施策です。事業の内容や取り組んでいるミッションに従って、部署を分割するという水平的な構築と、リーダーを置き階層を作るという縦の構築があります。そのほかにも、特別な案件だったら社長直属にするとか、一つの部署に部下を何人まで配置するとか、考えることはたくさんあります。

・「System(制度・ルール)」

いわゆる人事制度(評価・報酬・目標管理など)を導入することです。経営者の考えと従業員の考えをすり合わせる方法は、人事制度しかないと思います。制度を導入しないと、組織はいつまでたっても個人のままです。組織を動かすために従業員にどのように働くことを求めるか、経営者の明確な発信が必要な施策になります。

・「Staffing(人員配置)」

配置・人事異動を実施するソフト面の施策です。組織体制を敷く一番のメリットは戦略の速やかな実行です。そのため、誰がどの役割を担うかによって、成果は大きく異なります。中小企業の限られた人的資源で事業をスピーディに推進するには、個人のプロフェッショナルスキルを最大限に活かすための分析とマッチングを実施し、定期的にメンテナンスを行う必要があります。

 

私は小さな組織ほど、この3つの”S”を押さえるべきだと思います。つまり、ずべこべ言わずにシステマチックな仕掛けを仕込んでしまい、組織を外側から完成させてしまうということです。

例えば、「Structure(組織骨格)」ですが、中小企業だと組織をピラミッド化することに抵抗感を覚える経営者の方も少なくないと思います。フラットな組織のまま行きたい、序列をつけたくない、など。確かに、そのやり方でうまくいっている間は私も無理に組織構造を変える必要はないと思います。

しかし、「組織がまとまらない」という違和感が現れ出したら要注意です。その違和感は水面上に現れている氷山の一角なのだと思います。水面下に潜む問題の核心は、「従業員が経営者の指示が聞けなくなってきている・鈍くなってきている」ことです。人事・組織開発は、経営者の方針や指示を組織の隅々まで流し込むためのシステムを作るための施策なのです。その過程で、従業員との信頼関係を作り直す必要があります。それについても上記の3つの”S”で網羅することができます。私が、小さい組織ほどなるべく早く導入してしまうべき、と述べている理由が分かって頂けるかと思います。

但し、この3つの”S”は組織に対して非常に客観的な視点が必要であることと、経営者自身が「人」や「組織」について時間を割かねばならないことは覚悟して頂きたいです。完璧なフルパックで対応する必要はないので、できる部分から簡単に対応することが望ましいと思います。

 

人手不足の日本で中小企業が発展するには

若手が採用できないのが当たり前の時代が来る

日本の労働力不足のスピードが深刻であるというポストを見ました。

調べてみて私も驚きましたが、元資料である内閣府「高齢化の推移と将来推計」を見ると、総人口が2070年(約50年後)までに8,700万人まで減少するそうです。現在が1億2000万人なので、4,000万人ほど減少する見込みのようです。驚くべきスピードで日本の人口は縮小していきます。

労働力と言われている15歳~65歳が減少していく状態では、人を採用したいと思っても採用はさらに難しい状況になります。大企業へ就職者数が一定数流れてしまうとすると、中小企業は厳しい戦いを強いられます。さらに、地方はそれ以上に施策を考えなくてはならないでしょう。

業態によると思いますが、例えばスーパーやアパレルのように人海戦術で人をつぎ込んで運営している店舗は自動化を進める必要があります。現に、ユニクロへ行ってみるとセルフレジが導入されていたりコーデ提案がマネキンや電子パネルによるものになっていたりとスタッフの方は削減されていることが分かります。これは大手企業だから成し得るものではなく、中小企業もこのように努力をしなくてはいけないということです。例えば、人事コンサル支援に入らせて頂いている企業様は、従業員10名の中小企業になりますがAIやChatGPTでの資料作成を模索されているようでした。

この方向転換にいち早く着手できるかどうか、これが中小企業が生き残る第一の鍵だと思います。

●参照(内閣府「令和5年版高齢社会白書」)

そして、上記のグラフを見れば、20代~30代の労働力が今よりもさらに取り合いになることは一目瞭然です。今後採用に力を入れたとしても、採用計画の通りに採用していくのは難しいと思います。採用担当者は営業マンさながら、高校・大学・転職エージェントを渡り歩き、売り込みに行く必要があります。ハローワークやエージェントサイトに求人を出しておけば自動的に申し込みが来るということは残念ながらなくなるのです。

しかも、2:8の法則で言えばその中で優秀と言われるような人材は20%程度でしょう。残りの80%を採用した場合、やはり社内で育成していくことは避けられません。

 


中小企業は既存人材を活用し、組織の効率を高める

私の個人的な意見として、組織の成熟なくして採用なしだと思っています。

今まで、チームの崩壊に幾度となく立ち会ってきました。そのような組織でよくあるのは、今ある組織を顧みずにとにかく人を採用し、人手不足を解消しようとしてしまうのです。組織がぼろぼろの状態でもとりあえず採用をかけ、組織に入れてみて、それで残った人材のみを使えばよいという考えだったのだと思います。辞めたあとに次の人材を採用できる頃はそれでよかったのでしょうが、人が採用できない社会ではそれは通用しなくなります。

組織を安定化させるために人事施策の必要性が高まっています。中小企業は、人手不足を乗り越えるために ①組織を整えてから採用すること ②今いる人材を活用すること の2点に取り組むべきでしょう。

まず一つ目の組織を整えるということについて、上記グラフから見ても1名採用できるということがとても貴重になってくる。そうすると、入社した人が会社に馴染めなかったり教えてくれる人が放置していたなど、カルチャーマッチング以外の問題(業務を吸収している段階)で短期間でやめていくということが無いようにしなくてはいけません。このチームにつける、誰から引き継ぎをさせる、その分の業務を誰に振り分ける、引き継ぎや教育に時間を割いた人に評価を上乗せする、こうして新しい人が入ってきてもチームが上手くまわるように制度や仕組みである程度道筋を立てておく必要があります。

また、入社者本人への意識付けややるべきことの明確化などコミュニケーションも最初は手厚めに対応しましょう。そのあたり、入ってきてからでは遅いので事前に練り上げておく必要があります。そうすることで、チームへの帰属意識と貢献意欲を早いうちから根付かせることができます。人事施策は組織の基盤づくりなのです。

二つ目の今いる人材の活用については、組織の効率を求められているので明確です。どこの企業も少ない人数で最大の成果を出さなくてはいけないということです。私が人事を経験して感じるのは、経営者やリーダーが部下や従業員の長所/短所、伸びそう/やらせるべきでない方向性、得意分野/不得意分野などを把握していないことが多いです。チームをまとめる立場として、自分の今抱えている戦力がどのくらいなのかは必ず把握しておきましょう。そのために、人事施策がないと客観的に分析することができないのです。

人が辞めていく、人が採れないと気付いてからでは遅いのです。組織を育てること、人を育てることはすぐに対策を始めましょう。

 

 

業務の線引きで組織が変わるチームデザイン

業務の線引きがずれたチーム

従業員を雇っている経営者、部下を抱えているリーダーがやるべきこととして、業務の境界線を引くということがあります。

経営者は、従業員一人一人の業務分担というよりも組織のハコを作るために組織改編ということになります。リーダーは部下一人一人の業務分担を見極め、業務ローテーションをかけることです。どちらの施策も「今いるメンバーで成果を最大にする」ための効率を追い求めて、括りを変えるのです。

チームが崩壊している組織の原因はさまざまありますが、企業風土へのてこ入れは一番最後かなと私は思います。企業風土、文化・カルチャーの根付かせるという施策ももちろん重要ですが、「人」に原因が埋まっていないのにてこ入れをしてしまうと、ピント外れの施策を実施しているリーダーと思われてしまいます。

私は、企業や組織の問題はまず先に「業務」に注目すべきだと考えています。特に、チーム内でのいざこざ、部署同士の仲が悪いなどコンフリクト的問題が多発している組織では、「人」ではなく「業務」の分業の仕方に課題があることが多いと思います。業務の線引きが曖昧(仕事のアサインが上手くいっていない)という状態は、業務の実務担当者が他の部署や他のメンバーとの調整にかなりの時間と労力を使います。そのため、無駄だとわかっていても作業を続けてしまったり、調整せずにルールを曲げてしまったり、そういったところからコミュニケーション不足が引き起こされ、結果として会社やメンバーへ不信感が募っていくのです。

このような組織やチームは、線引きをそのままにして効率化を図ろうと思ってもうまくいきません。事業の変化に組織がついていけず、ずれていっているのです。

 

 

これは、会社単位で考えると部署にも同じことが言えます。分業していく以上、部署同士の調整は避けられません。複数組織が連携することで、大きなプロダクトを生むのです。ただ、組織の分け方を間違えると無駄な調整が増えてしまい、従業員たちは疲弊していきます。その次に訪れるフェーズは、黙って自分の前から嵐が通りすぎるのを待つ、つまり面倒くさいことに首を突っ込むなどしたくないので、他部署との調整が発生する業務に手を出さなくなるのです。そうなった組織で、事業がドライブするはずがありません。

 

 


事業を発展させるリーダーに必要なのは「チームデザインスキル」

経営者やリーダーに身に付けてほしいスキルに、私は「チームデザインスキル」を一番に挙げています。複数人で成果を出すためにどのように分業していくのかを設計(デザイン)できるスキルのことです。

チームとして動く必要があるのは3人からです。2人は何とかなります。片方がもう片方と被らないように仕事をすればいいからです。しかし、3人からは複数人が協働することでの成果が求められます。1+1+1=3だと許されないわけですね。にもかかわらず、3人になった瞬間に一気に業務が漏れる・被るが発生し、効率がガタ落ちし出します。1+1+1=3にするのも難しいのです。つまり、3人以上の企業・チームでは、分業する上での土台作りができるリーダーが必要になります。これが、「チームデザインスキル」が必要な理由です。

また、一度組み上げた業務の線を調整していくのもデザインスキルです。チームは生きています。3か月前に良しとしたチーム内の業務のすみわけが、3か月後にそのままでよいということにはなりません。新しい業務が増えていたり、突発業務に対応していたり、繁閑の波が来たりと、リーダーが気づかないところでチームは日々変化しているのです。そのため、1+1+1=3以上にするには、チームを定期的に観察し、調整を繰り返していくことが求められます。私の感覚ですが、これができないリーダーが意外と多い印象があります。経営者やリーダーはメンバーに業務を落としていくのですが、その際に気まぐれに業務を振るわけにはいきません。その場しのぎではなく、一定の基準で業務を割り振ることで責任の所在を明確にしていくのです。

「チームデザインスキル」は、会社全体で考えても必要な視点です。組織は一度作ったら終わりではありません。事業の発展に合わせて少しずつ変えていくのです。特に、人数が少ない企業ではぎりぎりの人数で経営しているでしょうから、効率の悪さ(ボトルネック)は致命傷です。放ったらかしにして、市場や事業の変化に合わせたサービスやプロダクトを展開しようとしても、組織が手遅れで対応できないことがあります。また、急に大幅な組織改編をするというのは前述のとおり従業員に大きな負担を強いるので、なるべく避けた方がよいと思います。まさに、IGNITE HORIZONが掲げている「最強のチームで最高の成果を」を実現するには、組織およびチームを事業の成長に合わせて日々変化させていくことが重要になります。

 

 


「チームデザイン」の一歩はチーム分析から

実際にどうやって「チームデザインスキル」を身に付けていくかということです。

私は「チームデザイン」の5割はチーム分析が占めていると考えています。まず、自分のチームがどのように分業しているか現状を洗い出します。そして、この半期に出てきた課題をメンバーにヒアリングし、洗い出してみます。この2点を実施するだけで、チームの全体像が見えてきます。新しいプロジェクトを発足させる場合、何もないところに分担を割り振るので、比較的分かりやすいと思います。

しかし、現在回っているチーム内で業務分担を振りなおす、もしくは組織改編を実施するというのは非常に難しいです。一番の難関はメンバーの負担です。人は慣れたものを壊し、新しい環境になれるまでに時間がかかります。業務を回しながら新しい状況に慣れていくにはストレスがかかるものですよね。ですが、現在の業務分担や組織配置で何か問題が生じているはずなので、経営者・リーダーは自分の仕事を抱えながら、腰を据えてその「問題」改革に乗り出せるかどうかだと思います。もう一つ、この「問題」というのがやっかいで、前述のとおり「業務の境界を引き直す=慣れているものを一度壊す」ことは従業員からの反発があることも想定されます。リーダーがここに億劫になっていると、組織の「問題」というものに感覚が鈍くなっていることがあります。もしくは、目をつぶってしまうこともあるでしょう。成果を出すためには、経営者・リーダーがどれだけ覚悟をもてるかにかかっています。

もう一点、そうは言っても自分が所属している企業やチームを自分で分析するのは、少し恥ずかしさを感じるというか、躊躇してしまう人もいるのではないでしょうか。理由を考えてみましたが、分析とはいい部分も悪い部分も掘り返す作業なので、客観的視点が必要です。そのため、まるで「外部の人のようにふるまう」ことになったり、「自分の組織を信用していない」と宣言しているように感じるからではないでしょうか。そこに、自分のチームに所属しながら分析を進める難しさがあります。

外部の手を借りたいと感じていらっしゃる経営者・リーダーの方がいましたら、お気軽にお声かけ下さい。私が全社的に分析することもできますし、リーダーの方が「チームデザイン」できるように中長期的なメンターを担当することも可能です。御社に合わせて伴走させて頂きます。

 

書籍紹介(図解 人材マネジメント入門)

<書籍情報>

■書名:図解人材マネジメント入門 人事の基礎をゼロからおさえておきたい人のための「理論と実践」100のツボ

■著者:坪谷邦生

■出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン

■どんな人向けか:初めて人事分野を担当される方、人事施策の全体像を知りたい方

 


「人事って何やっているの?」という疑問に打ち勝つ本

人事や組織を勉強している中で、読んだ本についても紹介しようと思います。

今回紹介する本は、

「図解人材マネジメント入門 人事の基礎をゼロからおさえておきたい人のための「理論と実践」100のツボ」です。

人事を始めて11年経ちますが、本書を初めて店頭で手に取った際、この本が入社当時にあったらなあと思いました。どの分野でもそうですが、入社して最初は先輩社員が持っている雑務を振ってもらい、徐々にその業務の一担当となるわけです。しかし、それもまだ「人事」という全体像からすると本当に隅っこの部分を任されているだけであり、それを2年も3年も続けていると「今自分は全体のうちのどの部分を任されているのだろう」「一体いつになったら人事の全体像が分かるようになるのだろう」という暗闇の中を走っているような気分になることと思います。

私の場合は、「人事って何やっているの?」と他部署の同期や先輩から聞かれたときに、答えることができませんでした。私が答えられていたことと言えば、「普段は給与計算をしていて~、」「入退社の対応をしているよ」といった実務レベルの話に過ぎず、聞いてきた方も「ふーん」と興味を失ってしまうのです。しかも、実は労務をやっていたことが後からわかり、当時の私は人事と労務の区別すらついていませんでした。

本書は、そんな悩める人事担当に「人事とはこういうことをやるのだ」という全体像を見せてくれる非常に有効な説明書のようなものだと思います。本で勉強したいけど何から読むべきかわからないという方は本書をお勧めします。また、人事を立ち上げたいと考えている会社の方や人事施策を行いたい経営者の方にとっても、全体観を把握する上でも有効だと思います。

 


人事パーソンとしての設計図を手に入れよう

私は、人事担当になった方には、まず自分が担当する「人事」という領域がどのような要素で構成されているかを把握してもらいたいと考えています。そうすると、「自分が人事パーソンとしてどのように成長していくべきか」という道筋が見えてくることになります。任される業務だけで人事の全てを理解しようとするには何年あっても時間が足りません。そのため、自分が業務で携わっていない部分にどのような学ぶべきことが存在しているかを把握することが重要です。

私も本書をテキストにして社内で勉強会を実施していました。当時のチームは人事経験の浅いメンバーが多く、日々の業務に追われ、「人事とは何をすべきか」などを考えるきっかけもありませんでした。そのようなメンバーにも、本書をテキストにすることで人事の全体像を俯瞰してもらうことができました。

例えば、下記に引用している図ですが、人事の構成要素としてChapter1.人材マネジメントからChapter9.組織開発まで要素分けされています。各要素は相互で関係しており、また人が入社してから退職するまでの期間すべての要素を行き来することで人材資源を活用しています。そのため、どれか一つだけ極めるのではなくすべての要素に精通して初めて人材を扱うことができることが分かります。

さらに、Chapter10.働く人という項目があることもポイントで、雇用している人のキャリアを預かっていることも確認することができます。「人事のお客さんは従業員だからね」と当時の上司からみっちり叩き込まれてきましたが、制度や施策のような抽象的なものと従業員の一人一人のキャリアという具体的なものの双方を考えることも人事の重要な仕事の一つです。

 

引用:「図解 人材マネジメント入門」P.  

引用:「図解 人材マネジメント入門」P.19

 

 


「組織開発」の重要性

Chapterの内容について一つご紹介したいと思います。

Chapter9で解説されている「組織開発」についてです。上記の引用している図を見て頂くとお分かりのように、「組織開発」は全ての人事制度の土台になっています。つまり、組織という土台が機能していないところにいくらピカピカの人事制度を乗せたとしても機能させることができず、組織諸共倒れてしまうということです。

「組織開発って胡散臭いな」と思っている方も多いと思いますし、意外と長年人事に携わっている方でさえもそのように感じるのではないでしょうか。それもそのはず、つい10年くらい前までは、パワーバランス的に企業側(上司)が労働者側よりも強かった印象があります。そのため、放っておいてもメンバーは上司に言われた通りチームのために働きましたし、一部の能力しか持たない人でもチームに貢献している部分があれば、企業側は雇用を継続できる体力もありました。

それが時代が急激に変わり、パワーバランスも変わってきました。転職市場が活発になり始め、労働者側が「この組織から得るものは何もない」「大切に扱われていない」と感じると簡単に離れていくようになりました。一方、企業側は1on1や評価制度のような従業員の積極性を高めるような制度を導入しています。私はここに矛盾が起きているように感じています。本書の一部を引用します。

 

逆に不活性な組織とはどんなものでしょうか?それは固定化した階層組織、型にはまった役割、規則・制度・ルールなどで「管理」された組織です。(「図解 人材マネジメント入門」P.228)

 

要するに、人事制度を導入するというだけでは、組織が「管理」されることを促進してしまっていますので、この「不活性化組織」を作り出してしまうのです。

そこから脱するには、その制度を運用するリーダー側の積極性にかかっています。まるでその制度が存在しないかのように、ナチュラルにチームのことを考え、メンバーと対話ができるようになって初めてメンバーにリーダーの想いが伝わります。そしてメンバー側もこの組織に貢献しようという気持ちが高まり、組織は活性化しだすのです。リーダー開発に力を入れる企業が多いのは、まさにこの考えからです。

人事関係の皆様は本書で人事の役割を学んで頂くなかで、人事の土台は組織開発であるということを意識されてほしいなと思います。著者の坪谷邦生さんが出版されている本書のシリーズで、「組織開発入門」という本もありますので、そちらも今後紹介できればと思います。

 

マネジメントを独学で身に付ける難しさ

マネジメントは理論を学ばないと身につかない

私は、個人のお客様向けにチームビルティング講座を開催しております。

そこで受講者の方にお話を聞いてみると、リーダーがマネジメントについてどこにも相談できない状況だとわかりました。上司が自分のリーダー性を認めて昇格させてくれたのですから、「で、リーダーってどうやればいいんですか?」とは聞けませんよね。また、40代で初めてリーダーポジションを任される方も非常に多いのですが、その年齢になってしまうと「マネジメントって何をやったらいいんですか」とは今更聞きたくても聞けないのです。「若手でもないんだから、大体わかるでしょ」というわけです。経営者も同じです。組織や人に悩んでいる経営者の方も非常に多く、そのような経営者の素質に直結するような悩みを社内に相談することなどできません。

しかし、実際にマネジメントって何をしたらいいのでしょう。上位職制の皆様、部下に聞かれたら答えられますか?

 

今までの「マネジメント」というのは、独学で身に付けていくことが一般的でした。それがなぜ可能だったかというと、一つは終身雇用が当たり前の社会では、会社のためにチームや会社のために身を粉にして働くことが当たり前だったのだろうと思います。そのため、マネジメントなんかしなくても、チームのまとまりは高かったものと想像できます。もう一つは、マネジメントにはそれぞれの方が元来持っている性格や幼少期からの人生経験なども関係するので、一概にこうすればよいという方法論が確立していないのです。そのため、本を読んで理論を勉強するというものではなく、現場で身に付けていけという感じだったのでしょう。

すると、それぞれのマネジメントというものが存在しますので、どの上司にあたるかによって自分が吸収できるマネジメントの手法に限界が出ます。特に、ワンマンタイプのリーダーもしくはプレーヤー気質のリーダーにあたってしまったときには、そのチームの中でマネジメントというものはほぼ実施されていないはずです。そのようなチームは、メンバー各自の貢献意欲によって成り立っているという状況も多いのではないでしょうか。

現代は、転職市場の活性化に伴い、途中でやめる・新しい会社に入るということが昔より簡単になりました。そのため、同質性の中でチームを運営するということが難しくなり、急に背景の違うメンバーが入ってくる、会社やチームの人数が常に変動するということが増えました。ということは、マネジメント感覚が身についているリーダーが渇望されているのです。

しかし、リーダーとの関係が希薄に育てられてしまった人は、マネジメントというものがよく分からない状態でリーダーになってしまいます。自分がそうだったことから「メンバーたるもの、チームの維持に努めて当然」という考えの方や、自分の上司同様プレーヤーから抜け切れない方、メンバーとの接し方が分からない方、様々なパターンの「マネジメントができない」上司が誕生します。

そのような方は、いざチームが大量離職に見舞われたり、若手がなかなか成長しなかったり、自分のチームが崩壊し始めると原因が自分にあることに気付くことができません。私の周りでも「なぜ自分のチームのメンバーが退職していくのか分からない」と発言しているリーダーを何人も見てきました。

そうなる前に、リーダーに就任する前後からマネジメントを少しずつ練習していくべきだと思います。また、実践と同時に、マネジメントの理論や体系も学んでいきましょう。本を読んでもいいですし、Youtubeで無料で学ぶこともできますし、何でもよいと思います。もし、伴走者や壁打ち相手が欲しいときには、当方が提供している講座を受講して頂ければ状況を伺いながらマネジメントの理論を共有します。理論で学んだことを現場で実践する、そのサイクルを回していくことで身に付けるものだと思います。

 


リーダーに求められる2つの役割

では、リーダーは何をしなくてはいけないのか、理論から見ていくとどうなるでしょうか。

リーダーは「チームの切り盛り」を任されています。メンバーを与えられ、「この労働力を使って成果を出すように」という成果に対する責任も発生します。つまり、メンバーにできる限り効率的に働いてもらわないと、労働力と成果が見合わない状態になるのです。

リーダーの役割について、現在読んでいる書籍にて下記のようにまとめられていましたのでご紹介します。

 

 

リーダーとして部下を持つ、あるいは経営者として社員を持つということは、自分自身に課されているタスクの他に上記の2つの責任が自動的に付け加えられるということです。マネジメントの理論を学ぶと、今まで手探りだった「リーダーの役割」というものが見えてくるので、部下を持たない状態と持つ状態の大きな違いが生じることが実感されるかと思います。そうすると、リーダーは自分の時間の使い方をがらりと変える必要に迫られていると感じ、自分一人で成果を出すところから部下を巻き込んで成果を出す方法へシフトチェンジを模索する必要性が分かるかと思います。

昇格や配転の際に、この部分を説明してくれる経営層や上司はどのくらいいるでしょうか。経営者の方は上司がいないので、自分で気付くまで時間を費やすことになります。大方のリーダーはチームが崩壊し、メンバーが次々と離職していき、業務が回らなくなり、誰も自分についてきていない状態になって初めて今までの自分のマネジメントが0点だったことに気付くのです。しかし、それでは時すでに遅し、そこからチームを立て直すには新しくチームを作るよりも何倍もの工数と労力が掛かります。

 


リーダーに求められる精神的サポート

私が考えるに、上記の役割をもう少し具体的にしてみると、「部下にある程度仕事を任せ、部下が躓いている部分やうまくいっていない部分をフォローする」ところにあるのだと思います。そのため、私は業務の棚卸というものをリーダーの方にやってもらうべきだと考えており、チームビルディング支援をさせて頂いております。

そして、リーダーの役割を全うしていくうえで、目標管理制度は非常に有効だと私は思います。

多くの会社で制度として導入されていることと思いますが、なかなか自発的に実施しているリーダーは少ないのではないでしょうか。月に一回部下と面談して、目標設定して、愚痴を聞いて、フィードバックしてみる・・・このくらいの手順しか会社や上司から概要は伝えられないはずです。リーダーも時間がない中ででも、それでは部下は動きません。会社に言われたから面談しているリーダーに誰がついていきたいと思うでしょうか。

リーダーは+αで部下にサポート姿勢を見せる必要があります。先程の書籍に、リーダーの役割の中で「精神的サポート」についてさらに詳しい解説がありました。

これもよくご相談頂くのが「1on1の時に会話がなくなってしまって何を話したらいいかわからない」というお悩みです。このようなケースでは、支援ポイントが不明確な状態で部下に業務を振っていることが多いように思います。理論を学ぶと、部下たちは上記のような点で支援を求めていると予測できるので、面談の際にずれたことを確認してしまうことはなくなります。また、各人が分担している業務に当てはめることで、そこに対する取り組み方を伝えたり、スケジュールを引きなおしたり、振っている業務の分量を調整したりしていくのです。

このように、マネジメントで悩んでしまっているリーダーの方には、マネジメントに関する知識や理論が圧倒的に不足しているように感じます。まずはリーダーになった時から独学ではなく理論的にマネジメントを学んでいくということ、また会社やチームが回り出してからも自分のチームが沈む前にリーダーとしてどのような支援ができるかということを導き出し続けることがリーダーの役割かなと思います。お悩みの方がいらっしゃいましたら、お問合せフォームからお気軽にご連絡ください。無料相談も実施していますので、何かヒントになるようなことをお伝えできればと思います。

 

 

書籍紹介(人材マネジメント入門/守島基博)

■書籍名:人材マネジメント入門

■著者:守島基博

■出版社:日本経済新聞社

■どんな人向けか:人事の全体像を把握されたい方(ある程度実務を経験されている方)、文章に抵抗がない方

 


7~8年目でようやく理解できた”人事”の全体像

人事を経験される方に最初にお勧めする本として、本書を挙げたいと思います。

本書は私が4~5年目の頃に当時40歳くらいの課長が人事課内で勉強会を開いてくれており、その際に指定図書になっていたものです。その課長は、「みんな前提知識がないだろうから、まあ新書だし、薄いし、このくらいの本でいいか」という軽いノリで選択していたように記憶しているのですが、当時の私は全く太刀打ちができず、途中で挫折してしまいました。

それもそのはず、私がその当時所属していた部署は500人ほどの地域を管轄する小さな人事総務で、自分が何をやっているのかわかりませんでした。携帯の手配、退職金の計算、部長会の設営や資料準備、人員計画などなど…。要は業務が分類されておらず、人事・労務・総務・庶務・教育などがごちゃ混ぜになっていたのです。後から考えると、それはそれで経験にはなったのですが、当時は闇雲に仕事をしている感覚でした。

その後、明確に人事分野を担当し始めて、”人事”と呼ばれる範囲が分かるようになってきました。そして、7~8年目になると自分の部下ができ、人事の経験が浅い方に対して人事勉強会を毎週1時間開くことにしたのですが、その際に本書を読み返してみると、人事の業務範囲について網羅されており、我々の役割を整理するのに非常に役に立ちました。そのため、本書はある程度実務を経験されている方がよいかなと思います。また、新書につき、図表があまりないため文章に抵抗がない方におすすめしたいです。もう少しかみ砕いた内容の本については、またご紹介したいと思います。

 


人材の流れ(フロー)を意識する

人事・労務・総務・庶務・教育などの業務を一貫性なく雑多に経験している中で、人事についての特徴を理解することができました。人材フローとは、人が入社してから退職するまでの時間の流れのことです。従業員が企業に在籍する年数はその業界や企業によってさまざまですが、一度雇用すればあとはそれで放ったらかしでよいということではありません。まさに、この本に書かれているのですが、人事に携わるには「人材フロー」を頭に思い浮かべ、どの点・どの線に対して施策を講じているかを意識することが重要になります。

 

例えば、「人を育てる」ということにフォーカスを当てた場合、下記のようにどこを対策したいかによって講ずべき策が変わっていくことが分かると思います。

①日々の業務の中で従業員同士の成長を促すのか→OJT

②日々の業務では学ぶことができない分野や視点について補填するのか→外部研修

③昇格前後で求められる役割を認識させるのか→階層教育

③リーダーに部下の成長を促させるのか→リーダー育成

④早い段階から会社として期待していることを表し、自己研鑽させるのか→次世代経営層の抜擢

⑤若年層に対して仕事の基礎を教えたり、企業カルチャーへの定着を図る→メンター制度

 

この焦点がぶれてしまったり、ピントを絞らずに何となく全体的に…と実施してしまうと、具体的な結果を何も得ることができず、「人事は実績作りだけ」と揶揄されることになりかねません。必ず、自組織の分析とフォーカスすべき層の特定は実施した方が良いわけです。そして、どのようにフォーカスすべき層を特定するかにおいて、本書が非常に役立ちます。

本書を読むことで、人が雇用されている間のフェーズも分解し、上記の分析結果と照らし合わせることで、その企業独自の人事施策を組み上げることができます。ぜひ、ご参考にされてみてください。(分析方法が分からない方は無料相談が御座いますのでお気軽にご連絡ください)

 


人事部はいらないのか

本書の中に「人事部はいらないのか」という項目が存在します。

最初に本書を読み始めた4~5年目の頃は、自分の仕事に自信が持てず、会社のために何が貢献できているかが分からない状態だったので、この章を見た時にはどきっとしました。ですが、現在人事12年目を迎える段階で、そしてさらに人事コンサルタントとして活動しているので尚更ですが、「人事部は必要だ」とはっきりと明言することができます。

但し、個人的には、人事部が念頭におかねばならない条件があると思っています。人事部が一番忘れてはいけないのは「人事施策を導入することを目的にしてはいけない」ということです。常に知識を刷新し、自分が今担当している施策は「社員にとって有益な施策になっているか」「会社にとって成果を導ける施策になっているか」という最終結果を常に自分に問いかけることをしてほしいです。きれいごとだけではない人事の仕事ですが、そこだけは軸をぶらさないように進めて頂ければと思います。

小さな施策で視野がいっぱいにならないように、本書によって”人事”の中の自分の立ち位置を把握しましょう。そうすれば、他にもっと有益な施策が見つかるかもしれませんし、他の分野から手を付けた方が良い場合にも気付くことができます。例えば、確固たる目的もない状態で例年通りということで「階層教育」を計画している担当者が、人事全体が見渡せるようになることでピントが絞られ、「リーダー育成」にフォーカスすることだってできるわけです。

先述しましたが、私はよく他部署の従業員から「人事は実績がほしいだけ」と言われていました。それは、当時の人事部門において、この人材フローの全体像が見通せるメンバー・リーダーが少なかったことが原因だと反省をしています。これから人事としてプロフェッショナルを目指される方は、ぜひ本書を読んで頂ければと思います。

 

 

リモートワークのマネジメントと雑談

リモートワークで部下が感じる不安

直近で、完全リモートワークの企業にお勤めの方から「リモートワークでのチームビルディングについて教えてほしい」というご要望を頂き、カスタマイズセミナーを実施しました。リモートの状況下で若手社員が定着せず一気に辞めてしまった時期があり、このままではだめだとマネジメントをどうしたらよいかというお悩みでした。

実はこのテーマのご要望は今回が初めてではなく、ちらほら頂いています。コロナもほぼ落ち着いて出勤を求める企業が増えてきた中でも、現在でもリモートワークでの働き方を選択している企業もいるわけですね。エンジニアの方や育児中の方などにとっては柔軟な働き方を提示できれば採用につながる一方で、入った後にコミュニケーションが取りにくいことによる「チームの一体感」が出ないことについて悩まれているようです。

一番重要なポイントは「物理的な距離=心の距離を埋めることに手間をかけられるか」どうかだと思います。

これは完全出社の企業でもフリーアドレスなどの状況でも同じことが言えます。私も週に1~2回ほど在宅勤務をしますが、部下の立場での話をすると、自分の作業の進捗状況や働きぶりをリーダーが本当に見ていてくれているのか不安になるのです。下手すると、在宅勤務の日は丸一日リーダーとコミュニケーションを取らない日もあります。それが毎日リモートワークとなると、特に入社して歴の浅い新入社員や中途入社社員は不安が募ることでしょう。業務指示は降ってくるけどこちらの進捗は確認されない、自分の成長具合も計画されている感じがしないとなると、存在意義が見いだせなくなることは容易に想像できます。まさに、心の距離が遠くなっていく状態です。

リモートワークでは、「部下の心の距離を埋めること」がマネジメント層に求められます。マネジメントの義務としてプラスされていることを自覚しましょう。これはつまり、心の距離を埋めることができないリーダーはマネジメントスキルが不足しているということになります。若手のころはそこまで手をかけてもらっていない層が、自分たちがマネジメント層になったら部下との積極的なコミュニケーションを求められるというのは、押し付けられている感はあります。厳しい言い方をするとリーダーになる方は必ず評価される項目になると思います。

 


雑談は「このチームの一員である」というシグナル

心の距離を埋めるということは、「見ているからね」(見守りの意味でも監視の意味でも)ということをリーダー自身が発信しなくてはいけません。そのような状況であれば、雑談は非常によいツールであることを改めて考えてみてください。

実は、私も雑談をするのがそこまで好きなわけではありません。重要な打合せが重なっている日はそのシミュレーションで頭がいっぱいになり、雑談どころではなくなってしまいます。必要事項だけ打合せしてすぐにオンラインミーティングから退出したいという方の気持ちもわかります。

ただ、雑談が好きなリーダーと嫌いなリーダーは下から見ていると明白で、後者については「この人、人やチームに興味がないんだな」と部下は簡単に感じ取ることができます。すると、そのリーダーに対してついていこうという気持ちは全く起きず、貢献意欲などは湧きません。そして、リーダーのみならずチーム全体に対して心が開かない状態になってしまいます。これでは、チームビルディングのスタートラインにも立てていません。

雑談は「あなたはこのチームの一員」だというシグナルです。

雑談がないチームというのはビジネスライクが強い=心を開かなくてもよいチームということになります。個人的な感覚ですが、人間の本能として「雑談を日常的にかわしている人=味方」という安心感があるように思うのです。反対に、雑談がない=味方がいないとなるわけです。これは雑談の持つ効果を軽視できません。単純にフレンドリーな空気を作るということではなく、「このチームの一員かどうか」をお互いが判断するものなのです。

それに伴い、もう一つ意識して頂きたいのは、「リーダーきっかけで」雑談が始まることだと思います。まずはリーダーがこのチームに心を開いていることを示さないとメンバーに心を開くことを強要するのは到底無理でしょう。特にオンラインミーティングでは、出社している時のように突発的な会話が起きにくいので、その時は意図せずできていたコミュニケーションのハードルが格段に高くなります。リーダーがもしこの状況を脱したいのであれば、要所要所に雑談をはさんでみるということを実施してみてください。

 


スキマ時間を利用して小さな話をすればよい

雑談というと何かネタを用意して話を盛り上げなくてはいけないのかとか、プライベートで起きた情報を切り売りしなくてはいけないのかなどというイメージもありますが、そんな準備はしなくてよいと思います。また、相手から何か聞き出してあげなきゃ、相手を喋らせなきゃという時間でもないと思います。

要するに、雑談の話題自体が重要なのではなく、小さな話題(天気とか、ランチとか、通勤とか、社内イベントの話とか)がぽっと出せる雰囲気か+それに反応してくれる雰囲気かどうかの方が気にしてほしいポイントです。ここを面倒くさがっていてはいつまでたってもリモートワークでのマネジメントは確立していきません。

また、タイミングについては、オンラインミーティングのスキマ時間を利用しましょう。わざわざ雑談のために集まる必要はありません。ミーティングの開始・中断・終わりで少しでも時間が残っていれば、スキマ時間を利用してミーティングに関係するようなことから話すとよいと思います。業務についての話でも「ちょっと聞きたかったこと」であれば、それは「雑談」として話すことは可能です。

リモートワークのみならず、在宅勤務・フリーアドレスなどメンバーが離れて業務を行っているチームでは、リーダーは「物理的な距離=心の距離」を埋めることができなければ務まらないと思います。チームでの成果を出すためには、離れていてもチームが瓦解していないかを確認する必要があり、さらに結束するためにはどうしたらよいかを考えるのがリーダーの役目です。これを機にチーム内の「心の距離」を考えてみる一助になれば幸いです。

 

  • カスタマイズセミナー内での資料抜粋(IGNITE HORIZON 2023)