事業成果を出す組織を作るのブログ

トップダウンとボトムアップ

トップダウンvsボトムアップの論争

人事制度を導入するために組織診断をしていると、トップダウンとボトムアップという話にぶつかります。どちらが良いというわけではなく、必要な部分に必要な手法を使えているかという話だと思ったので、まとめました。

 


実は、中小企業はトップダウン組織が作りにくい

ネガティブな社風として、従業員様から「当社はトップダウンだ」というお話をよく伺います。

確かに中小企業では社長と従業員の距離が近いため、心理的にそのように感じることは多いかもしれません。社長の指示がダイレクトに個人に向かうことは大企業ではあり得ないことで、良くも悪くも受け取る側からしてみると言葉の重みは大きいものがあるでしょう。

また、一挙手一投足社長に見られてしまうわけですから、それでは従業員が息苦しくなるのは非常に理解できます。特にコア事業は社長の一番の得意分野であることが多く、社長の考えが色濃く反映されることは間違いないです。社長がいちいち口を出してくる、新しい取り組みを潰されるといった状況に従業員が疲弊してしまいます。

しかし、大企業と比べると、実は中小企業は現場の裁量が大きいように思います。小さい会社では、担当範囲を細分化することができないため、社員一人一人がある程度広い範囲を担当しなければなりません。社長も現場のことは意外と分からないことも多く、そうなると一定の権限の範囲内であれば、自由に動き回ることができます。

一方、上場企業は社長を中枢とした強烈なトップダウンです。各部署における業績ノルマの達成/未達成は厳しく評価され、優秀かどうかは噂が一気に回ります。加えて、フジテレビの件が分かりやすいですが出世競争や社内政治も蔓延し、トップの意見を確実に実行できる人材(イエスマン)が権力を握っていきます。人事権も社長にあるため、意向に沿わない人は異動させることで辞めさせずともその人材を組織から外す(いわゆる左遷)ことが可能です。

その点、中小企業においてはブラック企業を除き、ここまでの強烈なトップダウン組織は作りにくいと思います。まず、部署が少ないので人事権が効きにくく左遷ができない。さらに、現場は従業員が取り仕切っているため辞められては困る。無意識だとは思いますが、それを逆手に取った方はある場面では社長よりも発言権が大きくなったりもしているとお見受けしています。

中小企業の社長の皆さんは、会社を大きくしたいと考えていると思います。それはつまり、組織をさらにトップダウンに変えて締めていくという意味になります。しかし、従業員は現レベルでさえもトップダウンに対してアレルギーがある。ここをいかにして突破できるかを考えていく必要があります。

 


ボトムアップは自然発生的には生まれない

従業員の方から「当社はトップダウンだ」というお声と同じくらい聞かれるのは、社長様からの「当社はボトムアップは無理だ」というお話です。

社長様の立場からしてみると、「自分が指示をしないと従業員は何も動かない」と感じられています。ある意味その通りで、企業は社長が一番熱量を持っている組織体です。そのため、理論上は社長の期待以上に働いてくれる人はいないことになります。

しかし、ここで問題なのは、社長の立場からは現場が見えなくなっていることです。立場が上がると経営的視野が広がり、未来の事業計画を立てることになります。と同時に、視座が高くなった分、足元が見えなくなるのです。

例えば、なぜ退職者が止まらないのか、自分の方針がなぜ末端まで届かないのか、なぜ組織がまとまっている感覚がないのか。何か組織内に問題があるはずだが、同じフロアにいる従業員の様子が社長からは分からないというわけです。

それは、トップダウンオンリーで閉塞的な雰囲気になってしまっていることが一因かもしれません。組織拡大のためにさらなるトップダウン体制を作っていくことは必要ですが、ボトムアップ要素を入れておかないと組織は息ができなくなり、従業員は働く場所としてその企業を選ばなくなります。

ボトムアップは自然発生的には生まれません。そのため、意図的にボトムアップを取り入れる必要があります。ボトムアップが根付くことで社風も変えていくことができます。

 


ボトムアップが成立する条件

では、ボトムアップはどのような条件で成り立つのか。

私は「①トップからの問いかけ」と「②汲み上げる場の設定」が条件になると思います。

様々な組織を見てきましたが、①②それぞれ実施されているケースは実は非常に稀です。①の「トップ」とは社長様だけを指しているのではありません。リーダー(管理職)→メンバー、さらに下位組織でも主任・係長→後輩も当てはまります。小さなユニットになっても同じように①②が実施できて初めてボトムアップが可能な組織と言えます。

そして、この①②を作るところからボトムアップでやらせようとするリーダーが非常に多いですが、①②を下位の立場の者が作ることはできません。

ボトムアップはトップの熱量から始まります。トップが本気で皆さんの意見を聞きたいかどうか、従業員には透けて見えてしまいます。ボトムアップが自然発生的に生まれない要因はまさにこれで、求めるだけではだめだということです。

言い換えれば、トップの熱量があればボトムアップの組織に変えていくことは可能で、上手くできていない場合はこの「①トップからの問いかけ」と「②汲み上げる場の設定」を改善すればよいだけだと思います。ここは研修や伴走次第でいくらでも実施を促すことができます。

そして、人事制度(特に目標管理による評価制度)はこのボトムアップのネックになる条件を乗り越える一番よい手法です。人事制度を導入することで、①②が組織のルーティンワークとして入り込み、コミュニケーションの量は格段にアップします。(ただし、そこに質が伴うかはリーダー教育が必要です)

現在ご支援中の企業様では、評価のみならず組織体制を整えるための人事制度を導入すべく伴走しております。