事業成果を出す組織を作るのお知らせ

ブログ更新(書籍紹介(組織デザイン))

ブログを更新しました。

書籍紹介(組織デザイン)

書籍紹介(組織デザイン)

<書籍情報>

■書名:組織デザイン

■著者:沼上幹

■出版社:日本経済新聞出版社

■どんな人向けか:組織の骨格を組み立てたい方、組織開発のハード面を学びたい方、分業と調整について学びたい方

 


事業成果を出す者は分業を制する

今回ご紹介する書籍は「組織デザイン」(沼上幹)です。

本屋さんで書籍を探してみると、組織の骨格や構造について端的にまとめられている本が少ないことがわかります(意外とこの分野の研究者が少ないのかもしれません)。そんな中、本書は新書であるにも関わらず組織構造について非常に詳しくまとめられています。本書の内容は、他の「組織論」や「経営論」の本に度々登場し、またか!?というほど引用されています。組織構造の章がまるまる本書の内容だったりするくらい超有名なので、すでにお持ちの方も多いのではないでしょうか。一冊読むだけで組織のハード面について網羅的に学ぶことができますので、組織開発初心者から玄人まで必読の一冊です。

さて、私がこの本を手に取ったきっかけは「組織構造」と「分業」の関連性に気づいたことにあります。現職で一部上場企業に勤めていますが、そこでは数年前から社長肝いりの企画が多数始動していました。社長指針を刷新したり、現場からボトムアップの形で小さな改善を活性化させるような取り組みを導入したりと、経営者が組織を活性化させようとしている雰囲気が社内に広まっていました。これは良い取り組みである一方、社長自身は自分の想いが社員の末端まで行き届いていないことを課題に感じていたはずです。人事として会社全体の組織改編を取り扱う中で、本当に今の組織形態が一番効率の良い形なのだろうか?人事として新しい形を提案できなくてよいのだろうか?と疑問を持つようになりました。

「組織構造」と「分業」は密接に関わっています。しかし、この対応を蔑ろにしているリーダーが意外と多く、チーム成果が出せていない組織ではこのどちらか(もしくは両方)がうまく機能していません。これは大所帯の企業も少人数チーム(私は3人からがチームだと思っています)も本質は同じです。崩れていく組織は布陣が曖昧なのです。なぜ従業員が自分の方針を理解してくれないのか、なぜ従業員は非効率に作業を進めてしまうのか、なぜ従業員同士がすぐもめてしまうのか…実は「組織構造」と「分業」が大混乱している証拠なのです。

最終的に作業や情報が滞りなく組織の末端まで流れていくことがめざすべき形です。そのために経営者やリーダーがやるべきことは何か。まずは「組織の骨格を再設計する」ことです。言い換えると、組織図を描き起こせるようなチームの状態を作ります。これは組織を牛耳る者しか担うことができません。いくらメンバーが組織の形を整理したいと思ってもできないのです。

企業はチームです。事業が伸びている企業は「分業」がうまく機能しています。自然発生的に機能しているのではなく、経営者が分業での成果の出し方を知っているのです。つまり、チームで成果を出す者は「分業」を制していると言えるでしょう。

 


ボトルネック工程を見つけ出せるか

本書は分業の理論的な考え方について学べる良書です。その中で読んでいて感じることは、分業は水のようだということです。作業工程を「フロー」と呼ぶくらいなので、まさに水の流れそのものです。

作業工程もスタート地点からゴール地点へと流れていきます。その過程で、詰まっているところ=一番時間がかかるところがあると途端にフローは滞ります。これをボトルネック工程といいます。皆さんもチームで仕事をする際に、「分担がうまくいかないな」と悩んでしまう箇所はないでしょうか。担当者同士がもめていたり、マンパワーが必要だったり、なぜこの作業をやっているかわからなかったり、そういう箇所や部署はまさにボトルネックなのです。

ボトルネック工程を排除することはできませんので、本書ではボトルネック工程の取り扱い方についても教えてくれています。

 

①ボトルネック作業があまり重要でない作業・部署だった場合 → 作業や存在自体をいかに小さくするか/注力するか/効率化するか

②ボトルネック工程が重要部署・重要作業だった場合 → 周りの作業を効率化し、いかにリソース(時間・優秀人材)を突っ込むことができるか

 

これができるかどうかだけでも組織の動きは全く変わってきます。本書で繰り返し述べられているのは、「ボトルネック工程と非ボトルネック工程を仕分けしてください」ということです。あなたの企業・あなたの組織が抱えている作業や案件を全て棚卸する必要があります。これは、片付けの手法と非常に似ています。片付けコンサルタントの近藤麻理恵(こんまり)さんが提唱されているこんまりメゾッドでは、まず部屋の中央に家の中にあるすべてのものを集めてきて、カテゴリごと(書類・衣服・本・小物など)にどれを残すか選別していくそうです。まさに、工程の棚卸もこの作業と同じことをします。

やり方が分かれば自分で片づけられる人もいれば、片付けコンサルタントに依頼して短時間で一気に片づける人もいます。「組織構造」と「分業」の整理も、短時間で一気に済ませてしまいたい場合は外部へ委託されることをお勧めします。ボトルネック工程が抽出できた後は、リソースの分配まで一気通貫で構築することが可能です。

また、片付けと組織整理の違いは、複数の人や部署が絡み合う点です。自分で決めればよいわけではなく、都度担当者のヒアリングが必要になります。何も聞かずに断捨離されたら現担当者は自分の人格を否定された気持ちになり怒り出す。つまり、気持ちにも配慮しながら進めなくてはいけない非常に繊細な作業です。事業を進めながら組織を整えるのは、難易度がかなり高いことが分かります。

事業が進んでいく中で組織について立ち止まれるか、飛躍するための準備期間を設けられるか。事業の成功は「組織構造」と「分業」を機能させる作業に掛かっている。本書を読んで痛感した気づきでした。