事業成果を出す組織を作るのブログ

なぜあなたの組織はまとまらないのか

チームとして機能していないという経営の悩み

ご連絡頂いた企業様と無料相談を実施しています。

ご相談頂く内容で多いのは、「組織がまとまらない」という悩みです。「新しい事業に取り組みたいが従業員が納得していない」「同じ方向を向いている感じがしない」「自分一人で成果を出している」など。「チームで成果を出す」とは程遠い状況に経営者の皆様は悩まれています。

従業員数がまだそこまで多くはない中小企業におかれては、従業員と経営者との距離が近いため、より密接なやり取りが必要になります。従業員がついてきていない、というのが肌で感じ取れてしまうんですね。職人気質な風土だから、寡黙な性格の人が多いから、年配の人が多いからとは言え、経営者の方向性を従業員が理解している組織であれば、「まとまっている」「伝わっている」という感覚は感じることができます。逆に言えば、自分の組織に感じた違和感、残念ながらその感覚は当たっていると思います。

このような状況下で無理やり事業拡大を行ったり採用強化を図り組織を拡大させようとすると、たちまち組織が崩壊します。従業員の離職が止まらなくなったり、従業員との溝がより深くなってしまいかねません。このような時には、従業員サイド/経営者サイドの両方からの改善施策が必要です。今回は経営者サイドからの課題を挙げてみたいと思います。経営者の方は耳が痛いと思いますが、確認して頂ければと思います。

 

いくつか要因はありますが、大きなものとしては①リーダーシップの問題、②組織の問題があります。

①リーダーシップの問題については、ヒアリングの中で従業員と経営者の間に溝があることがよくあります。昨今様々なリーダーシップの在り方が提唱されていますが、経営者の方は私はリーダーシップとはコミュニケーションだと思っています。もっと具体的に言うと、”対象”と”タイミング”と”量”です。このどれか一つでもずれてしまっていると、リーダーシップは失敗します。つまり、組織を引っ張れている状況ではないということです。

経営者の方で、意外とリーダーシップの出し方に失敗してしまっている人がいます。優秀な経営者=優秀なリーダーとはならないのです。ここが事業と組織のバランスの難しいところです。いくら事業で面白いことが思いついたとしても、やりたい方向性が見つかったとしても、資金調達が上手くいったとしても、事業を膨らませるのは「人」なのですから、「経営者」は「リーダー」へシフトしていく必要があります。

こちらについては、別でブログとしてまとめたいと思います。

 


組織を強化するための仕掛けを仕込む

チームがまとまらない原因②「組織の問題」について解説します。

まず大前提として押さえて頂きたいのは、チームは個人の集まりです。従業員は入社したらすぐにチームの一員になるわけではありません。ここも意外と見落としがちです。目の前に事業としてやることがある、従業員がそこに取り組んでいる、これだけで安心してはいけないのです。

チームというものはどのように形成されていくのでしょうか。「組織設計概論」(波頭亮)によると、組織を構成する要素は下記の3つの”S”です。「Structure(組織骨格)」「System(制度・規則)」「Staffing(人員配置)」です。

・「Structure(組織骨格)」

組織図を作るというハード面の施策です。事業の内容や取り組んでいるミッションに従って、部署を分割するという水平的な構築と、リーダーを置き階層を作るという縦の構築があります。そのほかにも、特別な案件だったら社長直属にするとか、一つの部署に部下を何人まで配置するとか、考えることはたくさんあります。

・「System(制度・ルール)」

いわゆる人事制度(評価・報酬・目標管理など)を導入することです。経営者の考えと従業員の考えをすり合わせる方法は、人事制度しかないと思います。制度を導入しないと、組織はいつまでたっても個人のままです。組織を動かすために従業員にどのように働くことを求めるか、経営者の明確な発信が必要な施策になります。

・「Staffing(人員配置)」

配置・人事異動を実施するソフト面の施策です。組織体制を敷く一番のメリットは戦略の速やかな実行です。そのため、誰がどの役割を担うかによって、成果は大きく異なります。中小企業の限られた人的資源で事業をスピーディに推進するには、個人のプロフェッショナルスキルを最大限に活かすための分析とマッチングを実施し、定期的にメンテナンスを行う必要があります。

 

私は小さな組織ほど、この3つの”S”を押さえるべきだと思います。つまり、ずべこべ言わずにシステマチックな仕掛けを仕込んでしまい、組織を外側から完成させてしまうということです。

例えば、「Structure(組織骨格)」ですが、中小企業だと組織をピラミッド化することに抵抗感を覚える経営者の方も少なくないと思います。フラットな組織のまま行きたい、序列をつけたくない、など。確かに、そのやり方でうまくいっている間は私も無理に組織構造を変える必要はないと思います。

しかし、「組織がまとまらない」という違和感が現れ出したら要注意です。その違和感は水面上に現れている氷山の一角なのだと思います。水面下に潜む問題の核心は、「従業員が経営者の指示が聞けなくなってきている・鈍くなってきている」ことです。人事・組織開発は、経営者の方針や指示を組織の隅々まで流し込むためのシステムを作るための施策なのです。その過程で、従業員との信頼関係を作り直す必要があります。それについても上記の3つの”S”で網羅することができます。私が、小さい組織ほどなるべく早く導入してしまうべき、と述べている理由が分かって頂けるかと思います。

但し、この3つの”S”は組織に対して非常に客観的な視点が必要であることと、経営者自身が「人」や「組織」について時間を割かねばならないことは覚悟して頂きたいです。完璧なフルパックで対応する必要はないので、できる部分から簡単に対応することが望ましいと思います。

 

人手不足の日本で中小企業が発展するには

若手が採用できないのが当たり前の時代が来る

日本の労働力不足のスピードが深刻であるというポストを見ました。

調べてみて私も驚きましたが、元資料である内閣府「高齢化の推移と将来推計」を見ると、総人口が2070年(約50年後)までに8,700万人まで減少するそうです。現在が1億2000万人なので、4,000万人ほど減少する見込みのようです。驚くべきスピードで日本の人口は縮小していきます。

労働力と言われている15歳~65歳が減少していく状態では、人を採用したいと思っても採用はさらに難しい状況になります。大企業へ就職者数が一定数流れてしまうとすると、中小企業は厳しい戦いを強いられます。さらに、地方はそれ以上に施策を考えなくてはならないでしょう。

業態によると思いますが、例えばスーパーやアパレルのように人海戦術で人をつぎ込んで運営している店舗は自動化を進める必要があります。現に、ユニクロへ行ってみるとセルフレジが導入されていたりコーデ提案がマネキンや電子パネルによるものになっていたりとスタッフの方は削減されていることが分かります。これは大手企業だから成し得るものではなく、中小企業もこのように努力をしなくてはいけないということです。例えば、人事コンサル支援に入らせて頂いている企業様は、従業員10名の中小企業になりますがAIやChatGPTでの資料作成を模索されているようでした。

この方向転換にいち早く着手できるかどうか、これが中小企業が生き残る第一の鍵だと思います。

●参照(内閣府「令和5年版高齢社会白書」)

そして、上記のグラフを見れば、20代~30代の労働力が今よりもさらに取り合いになることは一目瞭然です。今後採用に力を入れたとしても、採用計画の通りに採用していくのは難しいと思います。採用担当者は営業マンさながら、高校・大学・転職エージェントを渡り歩き、売り込みに行く必要があります。ハローワークやエージェントサイトに求人を出しておけば自動的に申し込みが来るということは残念ながらなくなるのです。

しかも、2:8の法則で言えばその中で優秀と言われるような人材は20%程度でしょう。残りの80%を採用した場合、やはり社内で育成していくことは避けられません。

 


中小企業は既存人材を活用し、組織の効率を高める

私の個人的な意見として、組織の成熟なくして採用なしだと思っています。

今まで、チームの崩壊に幾度となく立ち会ってきました。そのような組織でよくあるのは、今ある組織を顧みずにとにかく人を採用し、人手不足を解消しようとしてしまうのです。組織がぼろぼろの状態でもとりあえず採用をかけ、組織に入れてみて、それで残った人材のみを使えばよいという考えだったのだと思います。辞めたあとに次の人材を採用できる頃はそれでよかったのでしょうが、人が採用できない社会ではそれは通用しなくなります。

組織を安定化させるために人事施策の必要性が高まっています。中小企業は、人手不足を乗り越えるために ①組織を整えてから採用すること ②今いる人材を活用すること の2点に取り組むべきでしょう。

まず一つ目の組織を整えるということについて、上記グラフから見ても1名採用できるということがとても貴重になってくる。そうすると、入社した人が会社に馴染めなかったり教えてくれる人が放置していたなど、カルチャーマッチング以外の問題(業務を吸収している段階)で短期間でやめていくということが無いようにしなくてはいけません。このチームにつける、誰から引き継ぎをさせる、その分の業務を誰に振り分ける、引き継ぎや教育に時間を割いた人に評価を上乗せする、こうして新しい人が入ってきてもチームが上手くまわるように制度や仕組みである程度道筋を立てておく必要があります。

また、入社者本人への意識付けややるべきことの明確化などコミュニケーションも最初は手厚めに対応しましょう。そのあたり、入ってきてからでは遅いので事前に練り上げておく必要があります。そうすることで、チームへの帰属意識と貢献意欲を早いうちから根付かせることができます。人事施策は組織の基盤づくりなのです。

二つ目の今いる人材の活用については、組織の効率を求められているので明確です。どこの企業も少ない人数で最大の成果を出さなくてはいけないということです。私が人事を経験して感じるのは、経営者やリーダーが部下や従業員の長所/短所、伸びそう/やらせるべきでない方向性、得意分野/不得意分野などを把握していないことが多いです。チームをまとめる立場として、自分の今抱えている戦力がどのくらいなのかは必ず把握しておきましょう。そのために、人事施策がないと客観的に分析することができないのです。

人が辞めていく、人が採れないと気付いてからでは遅いのです。組織を育てること、人を育てることはすぐに対策を始めましょう。