2024年01月08日
リモートワークで部下が感じる不安
直近で、完全リモートワークの企業にお勤めの方から「リモートワークでのチームビルディングについて教えてほしい」というご要望を頂き、カスタマイズセミナーを実施しました。リモートの状況下で若手社員が定着せず一気に辞めてしまった時期があり、このままではだめだとマネジメントをどうしたらよいかというお悩みでした。
実はこのテーマのご要望は今回が初めてではなく、ちらほら頂いています。コロナもほぼ落ち着いて出勤を求める企業が増えてきた中でも、現在でもリモートワークでの働き方を選択している企業もいるわけですね。エンジニアの方や育児中の方などにとっては柔軟な働き方を提示できれば採用につながる一方で、入った後にコミュニケーションが取りにくいことによる「チームの一体感」が出ないことについて悩まれているようです。
一番重要なポイントは「物理的な距離=心の距離を埋めることに手間をかけられるか」どうかだと思います。
これは完全出社の企業でもフリーアドレスなどの状況でも同じことが言えます。私も週に1~2回ほど在宅勤務をしますが、部下の立場での話をすると、自分の作業の進捗状況や働きぶりをリーダーが本当に見ていてくれているのか不安になるのです。下手すると、在宅勤務の日は丸一日リーダーとコミュニケーションを取らない日もあります。それが毎日リモートワークとなると、特に入社して歴の浅い新入社員や中途入社社員は不安が募ることでしょう。業務指示は降ってくるけどこちらの進捗は確認されない、自分の成長具合も計画されている感じがしないとなると、存在意義が見いだせなくなることは容易に想像できます。まさに、心の距離が遠くなっていく状態です。
リモートワークでは、「部下の心の距離を埋めること」がマネジメント層に求められます。マネジメントの義務としてプラスされていることを自覚しましょう。これはつまり、心の距離を埋めることができないリーダーはマネジメントスキルが不足しているということになります。若手のころはそこまで手をかけてもらっていない層が、自分たちがマネジメント層になったら部下との積極的なコミュニケーションを求められるというのは、押し付けられている感はあります。厳しい言い方をするとリーダーになる方は必ず評価される項目になると思います。
雑談は「このチームの一員である」というシグナル
心の距離を埋めるということは、「見ているからね」(見守りの意味でも監視の意味でも)ということをリーダー自身が発信しなくてはいけません。そのような状況であれば、雑談は非常によいツールであることを改めて考えてみてください。
実は、私も雑談をするのがそこまで好きなわけではありません。重要な打合せが重なっている日はそのシミュレーションで頭がいっぱいになり、雑談どころではなくなってしまいます。必要事項だけ打合せしてすぐにオンラインミーティングから退出したいという方の気持ちもわかります。
ただ、雑談が好きなリーダーと嫌いなリーダーは下から見ていると明白で、後者については「この人、人やチームに興味がないんだな」と部下は簡単に感じ取ることができます。すると、そのリーダーに対してついていこうという気持ちは全く起きず、貢献意欲などは湧きません。そして、リーダーのみならずチーム全体に対して心が開かない状態になってしまいます。これでは、チームビルディングのスタートラインにも立てていません。
雑談は「あなたはこのチームの一員」だというシグナルです。
雑談がないチームというのはビジネスライクが強い=心を開かなくてもよいチームということになります。個人的な感覚ですが、人間の本能として「雑談を日常的にかわしている人=味方」という安心感があるように思うのです。反対に、雑談がない=味方がいないとなるわけです。これは雑談の持つ効果を軽視できません。単純にフレンドリーな空気を作るということではなく、「このチームの一員かどうか」をお互いが判断するものなのです。
それに伴い、もう一つ意識して頂きたいのは、「リーダーきっかけで」雑談が始まることだと思います。まずはリーダーがこのチームに心を開いていることを示さないとメンバーに心を開くことを強要するのは到底無理でしょう。特にオンラインミーティングでは、出社している時のように突発的な会話が起きにくいので、その時は意図せずできていたコミュニケーションのハードルが格段に高くなります。リーダーがもしこの状況を脱したいのであれば、要所要所に雑談をはさんでみるということを実施してみてください。
スキマ時間を利用して小さな話をすればよい
雑談というと何かネタを用意して話を盛り上げなくてはいけないのかとか、プライベートで起きた情報を切り売りしなくてはいけないのかなどというイメージもありますが、そんな準備はしなくてよいと思います。また、相手から何か聞き出してあげなきゃ、相手を喋らせなきゃという時間でもないと思います。
要するに、雑談の話題自体が重要なのではなく、小さな話題(天気とか、ランチとか、通勤とか、社内イベントの話とか)がぽっと出せる雰囲気か+それに反応してくれる雰囲気かどうかの方が気にしてほしいポイントです。ここを面倒くさがっていてはいつまでたってもリモートワークでのマネジメントは確立していきません。
また、タイミングについては、オンラインミーティングのスキマ時間を利用しましょう。わざわざ雑談のために集まる必要はありません。ミーティングの開始・中断・終わりで少しでも時間が残っていれば、スキマ時間を利用してミーティングに関係するようなことから話すとよいと思います。業務についての話でも「ちょっと聞きたかったこと」であれば、それは「雑談」として話すことは可能です。
リモートワークのみならず、在宅勤務・フリーアドレスなどメンバーが離れて業務を行っているチームでは、リーダーは「物理的な距離=心の距離」を埋めることができなければ務まらないと思います。チームでの成果を出すためには、離れていてもチームが瓦解していないかを確認する必要があり、さらに結束するためにはどうしたらよいかを考えるのがリーダーの役目です。これを機にチーム内の「心の距離」を考えてみる一助になれば幸いです。
- カスタマイズセミナー内での資料抜粋(IGNITE HORIZON 2023)
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