2026年04月06日
複数のご支援先にて従業員面談を立て続けに実施しました。そこで、どの企業様でも共通して出てきた話があります。人事制度が上手く機能していない企業様では「何が評価されているのか分からない」「自分は会社に貢献できているか実感がない」という声が多く寄せられました。
中小企業は従業員数が少ないので、一人一人の重さが大きく、一人辞めれば死活問題です。それでも、このような意見が多数出てくるということは、やはり人間は自分が貢献できているかを確認したい生き物なのだなと思います。
では、なぜそれほどまでに「貢献の実感」が持てないという声が現場から上がってくるのでしょうか。
評価制度は、人間が根源的に抱えるこの「切実な願い」に応えるための装置であるべきだと考え、本本記事では、心理学的な「貢献欲求」の観点から、組織力を蘇らせる評価制度の本質を解説します。
チームに貢献できているか確認したい
太古の昔から、人間は小さな集団で生活をしてきました。そこでは、自分がいかにこのチームに貢献しており、いかに必要な人材になるかということがその集団での生存戦略だったと言えます。
現代の日本においては、その集団は会社であり、さらに小さな集団は自分の部門ということになります。自分は本当に、この場所で必要とされているのか。 従業員は常にこの問いに対する「確信」を求めています。
私は人事制度のご支援をさせて頂く中で、人間の「貢献したい気持ち」と「貢献していると確認したい気持ち」がいかに組織に作用しているかを実感するようになりました。つまり、この気持ちを上手く扱えているかどうかが従業員の定着に大きく関わっていると思います。
まず若手についてですが、若手については明確です。若手の離職に悩まれている企業様では、「あなたの貢献度」や「将来への期待」を伝えられていないことが非常に多いです。つまり、「将来への期待」を言葉にできていないケースが目立ちます。1on1のような面談をやっていても、そこに意思のキャッチボールを取るコミュニケーションがない場合も見られます。よくあることではありますが、しっかり時間も取って打合せはしていても、核心について話している時間が短いこともあります。これでは、折角業務の合間をぬって打合せしても意味が薄くなってしまいます。
その中で意外と見落とされがちですが、実はこの問いは長年その企業を支え続けてきたキーマンやベテラン社員の方からも話が出ます。私は組織診断で実施する従業員面談において、何度もこの話を伺ってきました。
キーマンの方は、自分のスキルアップや給与アップといった個人的なフェーズを超え、「会社全体の底上げ」や「伝統の継承」に意識が向いています。そのため、自分自身ではなく、自分が自発的に取り組んでいる施策が社内で重要視されていないことに関しては、虚しさを感じていることがあります。ここに社長様が気付いていないことも多いように私は感じており、社長様とキーマンの面談に私が同席することもあります。
そしてベテランの方々。この方々は会社の過去を担ってきた人たちです。新しい事業を始めようとしたり、新しいやり方を取り言えれようとすると、ベテランが阻止してくるという話も伺います。ベテラン勢が新しい変化に反発するのは、変化を嫌っているからだけではありません。「自分のこれまでの貢献(過去)が否定されるのではないか」という恐怖の裏返しでもあります。しかし、私が感じることはベテランこそ会社への愛着と帰属意識があるのです。この方たちが会社の良いところを支えているとも言え、会社の経歴を語ってくれることが伝統として未来につながっていくため語り手として重要な役割はあると思います。
そこで、「キーマン・ベテランにこそ評価をフィードバックしてあげてください」と社長様にお伝えしています。それは、良いことばかりフィードバックするものではありません。会社の中にずっといたからこそ、外の動きに鈍いこともあります。会社が今までと異なることをやろうとすると反発もあるでしょう。あなたの過去の働きっぷりを否定するものではない。過去の貢献に感謝しつつ、今後やってほしいことをきちんと伝えていくことは会社側の義務だと思います。
貢献したい気持ちを満たす昇格審査
「貢献したい気持ち」と「貢献していると確認したい気持ち」。この欲をきちんと満たすことができれば、従業員はその組織に意思をもって所属してくれると思います。逆に言えば、これらが確認できない組織からは従業員は離れていってしまうということです。
評価制度はそのメッセージを伝える唯一の方法だと思います。それはつまり、評価制度を運用できていない企業様においては、「あなたはこの組織に必要です」というメッセージを伝える術が他にほとんどありません。使わない手はないのです。
そのためにやるべきは、評価制度をきちんと運用し、評価の高い従業員を「昇格審査」をすることで役職に就くための選抜をすることです。審査を通ることは、多かれ少なかれ従業員にとって嬉しいことです。任命してもらったんだから責任を果たそうという気持ちが湧いてくるはずです。

当社で提案している管理職昇格審査の案です。
上記資料は当社で提案している昇格審査のサンプルです。特に、管理職に上がるときは大きな変化になりますので、できる範囲で構いませんが必ず審査を実施した方がよいと言うのが私の意見です。
ここを省略してしまうのは、上記の「あなたの貢献度」を伝えるタイミングを逃してしまうので、非常に勿体ない。機会の有効活用をしてほしいと思います。
等級制度についてはこちらの記事を御覧ください。↓
報酬制度(賃金)についてはこちらの記事を御覧ください。↓
カテゴリ:ブログ,人事制度(評価制度),組織作り,人材育成
2026年03月03日
先日、東京都主催セミナー「統計技法を使った中小企業のための賃上げセミナー」に出席してきました。
非常に参考になったセミナーでしたので、備忘録もかねてブログにまとめたいと思います。

基本給の上げ方は3種類
近年、最低賃金の上昇に引っ張られる形で正社員の賃上げが進んでいます。
社会の流れが賃上げの流れのため、この流れの中で「自社も賃金を上げます」という姿勢を従業員に示せるかどうかが経営者に迫られています。特に中小企業は、今までほとんど賃上げをしてこなかったというお話もよく聞きますので、どこの経営者も「今まで頑張ってくれた従業員に還元したい」と奮闘されているように見られます。
さて、賃金=給与として考えた時に、賃金を上げると一口に言っても方法はいくつかあります。
まず、給与は大きく分けて基本給と手当に分かれています。簡単に説明すると、基本給はその個人の会社での貢献度や重要人物度を表しています。そのため、その会社に在籍している間は下げることは難しい(過去の評価を否定することになる)とされています。一方で、手当は役職や家族の有無など対象者が置かれている一時的な状態に対して支給する性質があり、その状態が解除された際には手当を外してもよいとされています(実際は適切な手続きを踏まなければなりません)。では、基本給はどのように算出されているのか、手当はいくつ種類があるのかなど、賃金の構成要素を分解し、どの部分を手厚くするかを考えることが報酬改定の第一歩です。
では、基本給を上げようとなった場合、一般的に3種類の上げ方があります。

一般的に「賃上げ」と言われるのものは「ベースアップ」に当たります。役職ごとに階差をつけるにせよ、一律で〇%や○○○円アップというように一斉に上げるやり方です。上記資料の図のように給与幅がまるまる垂直移動するイメージで、同じ箱に入っている人であれば個人の属性や能力に寄らず同じ金額分だけ上がります。
最低賃金が迫ってくる以上、ボトムの賃金は上げなければなりませんし、原資をたっぷり用意したからこそ「皆さんに利益を還元しました!」と経営者の方は言いたくなるとは思います。しかし、ベースアップとは賃金が「一律に」上がるしくみです。能力が高い人も低い人も、勤続年数が長い人も短い人も、キーパーソンもそうでない人も、個人の属性に関係なく賃金が上がります。これをどのように従業員が捉えるかについて、経営者は認識をはき違えないようにしなければなりません。
初任給を上げた先に待っているのは
上記の3種類以外に、最近では「初任給を上げたい」というご要望を頂きます。
大企業で「初任給30万」という話がニュースになるたびに、中小企業は戦慄してしまいます。そんなに人件費を上げたら倒産してしまう、でも若手を採らないと会社の未来を作っていけない。どうしたらよいのか…という不安ですね。
そこでやむを得なく、新卒~5年目くらいまでの若手社員の基本給を上げているケースを見かけます。苦し紛れの初任給アップということです。
しかし、これには2つの問題点があります。
一つ目はそのボーナス期間が終了すると、そこから賃金カーブを維持することはできず、上がり幅が低くなってしまうことです。若手人材がそのような会社に何年も在籍したいと思うでしょうか。これでは、結局昇給額が少ないことに不満を感じ、折角若手時代を育成した従業員がこれから戦力になるというタイミングで退職してしまうのは目に見えています。これは、若手の社会人キャリアをある意味騙して入社させるようなものなので、私はおすすめはしません。
二つ目は、5年目以下の社員と6年目以降の社員の基本給の逆転です。これは本当に厄介で、今までコツコツと勤務してきた従業員層が一気にやる気を失います。なぜこの間入ってきた人材が自分たちより給与が上なのか、説明されても納得はできません。そして、一つ目の理由に書いた通り、ボーナス期間が終わるとさっさと退職してしまう。育成の負担がのしかかっただけで、自分たちの給与は上がっていかない。
これはセミナーの中でも講師の方が問題として仰っていましたし、私自身もこの問題を伏せつつ初任給を上げる報酬制度を提案していると別のコンサルの方から伺ったこともあります。
私は二つ目の問題の方が深刻だと思います。ある程度その会社で勤務し、貢献してきた人材の給与を先に上げないと、会社の中の不満が一気に広がります。そのような人材は会社の中でも影響力が大きく、その層が不満は下の層ももちろん聞くことになります。そして、即戦力人材をみすみす手放すことになります。このような状態になっても、本当に初任給を高くして新卒を採用することを望みますか。ぜひ採用方針を振り返って頂きたいと思います。
キーマンの基本給を上げる方が先
原資が限られている中で、どの層に注力して人材の囲い込みをすべきか。これは重要な経営判断です。
私は、多くの中小企業において中堅層にこそ資源を投資してほしいという考えです。そして、一番資源を投資すべきはキーマンの報酬です。
私は、中小企業においてなぜかキーマンの囲い込みが弱いことが気になっています。理由の一つとして、中小企業はあまりにも「平等」「公平」を意識しずぎているのではないかと思います。確かに従業員がまだ少ないフラットな組織においては、「仲良くやる=組織がまとまっている」ことが存続の第一条件であり、そこに競争や贔屓を取り入れてしまうと組織が壊れてしまいます。では、このままフラットな組織のままだとどうなるかというと、優秀な人材の不満が溜まります。「平等」「公平」な運営をめざすと、組織の屋台骨である層を平等という枠の中に抑え込むことになります。「自分はこの会社に貢献しているはずなのに、ここでは評価されない」と感じてしまうわけです。すると、最終的にその人材は退職を選ぶでしょう。
キーマンは社内からも人望があります。そのため、「皆が慕う●●さん」が給与面で冷遇されていることは社員に筒抜けで、そんな冷遇している社長に対して少なからず疑問や懐疑心が育ってしまうことも少なくありません。キーマンが低賃金で働いてくれることに甘えていると、実はその周りの人たちがそんな会社に失望してしまうのです。
逆に言えば、キーマンの給与を上げることの効果は大きいと言えます。「会社が変わっていく」というメッセージは強まりますし、次にそのポジションに育てたい若手のモチベ―ションアップにもつながります。ポジションの重みというものが明確になり、「頑張って上のポジションにいけば、給与が高くなる」ことを示す良いチャンスです。
中小企業はぜひキーマンの報酬水準の見直しに着手頂きたいと思います。
2026年02月16日
曖昧だった評価を、経営と未来につながる基準へ
<支援先のご紹介>
企業名:六甲電子株式会社(半導体製造の一翼を担う企業として挑み続けています。:六甲電子株式会社)
設立:昭和58年9月(1983年)
所在地:兵庫県西宮市
従業員数:約50名(正社員)
事業内容:シリコンウェハー各種加工、再生処理、研磨加工、研削加工、MEMS対応超薄物研削、エッチング加工
支援期間:2025年2月~継続中
——【Before】評価基準が曖昧で制度が形骸化していた
Q. 当社の伴走は2025年2月から開始させて頂き、約1年が経過いたしました。コンサルを依頼頂いた当初、人事・組織のどのような課題が御社内に御座いましたか。
- 当時を振り返ると、まず大きかったのは、管理者層の経営意識が十分とは言えない状況だったことです。現場の業務は回っているものの、会社全体の方向性や経営視点を意識した判断ができているかという点では、まだ課題があると感じていました。
また、評価制度の面でも問題がありました。評価をする側の経験値が十分ではなく、適正な評価ができているのか不安がありましたし、評価基準自体も抽象的で、評価者ごとの判断にばらつきが出やすい状態でした。
さらに、評価結果が賞与や昇給とどのように結びつくのかが分かりにくく、社員にとって納得感のある仕組みになっていなかったと思います。従来は年齢に応じて賃金が上がる制度でしたので、成果を上げた人が十分に報われない側面もあり、人材育成の観点からも課題を感じていました。
Q. 御社は既存の人事制度がある状態でご依頼頂きました。人事制度に関しては、運用の中でどのような難しさが御座いましたか。
- 評価者によって評価の感覚が異なっていたことは大きな課題でした。同じ基準を使っているはずなのに、実際には判断にばらつきが出ていたように思います。
また、評価面談や目標設定の仕組みが十分に整っておらず、評価結果のフィードバックも行われていませんでした。そのため、評価が単なる結果通知のようになってしまい、業績にどう連動しているのかも不明瞭でした。
社員から見ても、「誰がどのように評価していて、どのくらい処遇に反映されるのか」が分かりにくく、モチベーションにつながりにくい状態だったと感じています。
—— 社長方針から評価軸を再設計したことが重要だった
Q. 開始してすぐにプロジェクト内の認識を揃える必要があると感じました。そこで、社長インタビューを実施させて頂き、六甲電子様の求める人物像を策定しました。また、評価者の皆様に1人30分ほどの評価者インタビューを実施したことで、六甲電子様独自の評価基準を抽出することができました。その際のご支援プロセスや新しい評価基準の設定はいかがでしたか。
- 社長インタビューや評価者インタビューを通じて、当社の価値観や、現場で実際に求められている行動・判断基準を改めて言語化できたことは非常に有意義でした。各評価者の考えを引き出していただいたことで、現状把握にも役立ったと思います。
そこで出てきた新たな課題として、評価者の中に、管理者としては誤った思考や認識が複数あることにも気づきました。この部分を是正していかないと、今後の制度移行に支障が出るのではないかという懸念もあります。
また、社長を含む経営層にとっても、会社方針や求める人物像を改めて考える良い機会になりました。
—— 運用を想定した制度を作ることを意識
Q. そこから改定後の評価基準を用いて、賞与から評価制度を導入しました。そこでは、既存の目標設定や1on1をさらにブラッシュアップして運用すべく、評価シートの構成を工夫したり、目標事例集を何度も精査したりと、こだわって作成しました。評価者の方への説明会・研修も実施いたしました。その辺りのご支援プロセスと運用開始後の状況はいかがですか。
- 導入前と比べて、評価の観点が明確になったと感じています。評価面談での対話の質も向上し、評価者自身が「評価の意味」を意識するようになりました。
今後の課題としては、初回ということもあり個人目標の中に水準の低い目標を記入してしまうケース、それに対して高い評価をしてしまうケースも見られます。評価者のスキルや、部下への目標設定の指導、進捗把握の精度を高めていくことが重要だと感じています。この点については、経験を積みながらレベルアップしていく必要があるでしょう。
Q. その後、等級制度の改定に取り掛かりました。社長様より、役職の定義に合わせて人材を昇格させていきたいと伺っていたため、等級制度作りにおける等級定義・役職定義はかなり時間を掛けてじっくり取り組んだように思います。他社と比較した一般的な能力から御社において求められる能力まで、網羅的に盛り込めたように思いますが、このプロセスを振り返っていかがでしたでしょうか。
- 他社事例や事務局の知見も踏まえながら、中身の濃い議論ができたと感じています。グレード定義・役職定義については、当社の実態を考慮しつつ、求められる人物像を具体的に盛り込むことができました。
特に、役職者が自らの役割や責任を改めて認識する材料としても意義があると思います。今後は、全社員に定義をしっかり周知し、毎期の目標設定に活かしていくことが重要だと考えています。
Q. そして、現在は報酬制度に進んでいます。人件費は業績に大きな影響を及ぼしますし、何より従業員の皆様のモチベーションにもインパクトが大きい内容です。社長様からのヒアリングや、我々コンサルタントから、現状分析のご報告と今後の昇給シミュレーションデータの提供など、様々な情報を総合的に判断しながら慎重に進めておりますが、プロジェクトの内容やご支援状況はいかがでしょうか。
- 人件費は業績に直結する重要なテーマですし、従業員のモチベーションにも大きく影響します。そのため、慎重に進めたいと考えておりましたが、当社プロジェクトメンバーとコンサルタントの双方が協力して進めていくことができています。
経営層が「これならいける」と納得できるような、説得力のあるデータの提示方法をぜひ一緒に模索していきたいと考えています。また、社外の視点から見て、最終的に六甲電子に本当にマッチした制度になっているかを判断できる方法があれば、アドバイス頂きながら実行していきたいと思っています。
Q. 人事制度構築もいよいよ佳境になってきており、従業員の皆様への説明会なども控えております。改定前と比べて、最終的にどのような変化をめざして残りの制度を作っていきたいですか。また、次フェーズである運用部分の支援について、コンサルタントに期待することは何でしょうか。
- 制度変更の目的がきちんと果たされ、効果を実感できる状態にしたいと考えています。そのために、制度変更の成果を測る評価方法があれば取り入れていきたいです。
本格的な切り替えにあたっては、必要なステップやイベント、実行面での重要ポイントについてもアドバイスをいただきたいと思っています。また、制度変更後の定着や効果の維持についても、継続的に議論していきたいです。
さらに、まだ具体化できていない役職定年制や降格時のルール、各種手当の妥当性などについても、今後しっかり議論していきたいと考えています。
カテゴリ:実績紹介
2026年01月03日
📢対面セミナー開催のお知らせ📢
普段は法人向けに支援させて頂いている中で、独学でマネジメントを学ぶ難しさを感じています。
本セミナーでは、私が経験したチームづくりの話を元に、崩壊チームや他人任せのチームをどのように変えていけば
よいか、リーダーはそのために何をしたらいいのかをお話します。
特に中小企業の方は、普段組織について相談する先がなく、困っていらっしゃるように感じます。
ぜひ、中小企業の方に受けて頂きたいと思っています。
経営者の方、リーダーの方、人事部門の方など、マネジメントに悩んでいる方はぜひご参加下さい。
―――――――――――――――――――――――—————―――
2026年2月11日(水・祝)13:00〜15:00
METSオフィス日本橋兜町
セミナーテーマ
『成果を出すチームへの組織改革』
参加費
10,000円→先着4名まで5,000円
お申込み
【チームビルディング×リーダー】 成果を出すチームへの組織改革講座 | Peatix

カテゴリ:お知らせ
2025年12月17日
ここ最近、「仕組み化」という言葉を目にする機会が増えています。
企業や組織は活動を継続することが求められます。継続するには、誰かがいなくなってもチームが回るようにしておかなければならず、「属人化」は大敵です。そのため、企業では属人化を解消すべく標準的な仕組みを取り入れ、誰が抜けても誰が入っても一定の品質を保ちつつ対応できるようにしようという動きが広まっています。
一見すると正しい方向に見えますが、私はここに「仕組み化」への過信を感じてしまいます。仕組みを導入しただけでは組織は動かず、結局はそれを動かす人にマネジメント能力次第で運用の良し悪しが決まってしまいます。それもそのはず、仕組みはマネジメント能力そのものを上げてくれるものではないため、どうしても使う個人の能力に依存します。仕組み化はハード面の施策のようで、実はソフト面が非常に大きく影響するということです。
人事制度はまさに「仕組み化」に該当するわけですが、ご支援する中で「人事制度が先か、マネジメントが先か」という問いを頂くことがあるので、記事にまとめてみました。
結論、マネジメントが先
「人事制度が先か、マネジメントが先か」という問いですが、結論から言うと私は「マネジメントが先」だと思っています。
全国の中小企業から人事コンサルのご依頼を頂く際、ご支援先の現状はまちまちです。多くは2パターンあり、①全く何もないところから人事制度を作ってほしいと依頼されるパターンと、②随分前に作った制度があるものの形骸化してしまって全く機能していないパターンがあります。
①のパターン(人事制度がない)についてもよくお話を伺うと、実は以前に担当者や経営者が独学で人事制度(特に評価)の設計を試みたり、人事制度まではいかなくても社内規範になるようなルールを作り、導入を試みている形跡があります。①②ともに「自分たちでやってみたけどできなかった」という挫折経験を経て、私のところへお声がけ頂くことが多いことが分かりました。
では、自分たちでやってみたけどできなかった要因は何でしょうか。
個人的には、多くの企業でこの挫折経験の原因特定がやや粗いように感じます。
まず、企業様から聞かれる原因は「仕組みが悪かった・古い」点です。確かにこれも原因としては考えられると私も思っています。というのも、人事制度はそもそも非常に難解です。人事未経験者が独学で人事制度を組む場合は、人事人材として専門的に労力を注ぐ必要があります。(ちなみに、我々コンサルが設計しても、設計期間は1年以上頂きます。)また、メンテナンスが必要な仕組みでもあるので、毎年課題と修正点を定点観測していないとあっという間に実態にそぐわない基準になってしまいます。歪んだ枠組みを使っていても成果が出ないのはその通りで、それ故に私も仕組みの重要性を説いている訳です。
ですが、途中まで手掛けた制度や規範を見せてもらうと、既存制度のクオリティが非常に高いので驚きます。漏れの無いスキルマップや業務マニュアル整備、売上目標の評語化、評価基準の洗い出し、手当の検討などもあったりします。私が修正をせずともそのまま使えるレベルで作られていており、驚くことも少なくありません。
では、なぜ失敗してしまうのか。それは、その企業様に「仕組みを運用できる力がないから」です。そして、この「仕組みを運用できる力」こそが、評価する側のマネジメント能力に当たります。
車を運転するにはドライバーの運転能力が必要
「人事制度」と「マネジメント」の関係は「車」と「ドライバー」の関係に似ているなと感じています。
人事制度を作ることは、車を作ることと同じです。要するに、ハードの設計という訳ですね。消費者のニーズに合わせてデザイナーが格好良い車にデザインすると、車の構造やしくみを熟知しているエンジニアが設計図を引き、現場では技術者たちが各パーツや素材の知識と技術を駆使して車を形成していきます。そのような専門性の集合体として、車が出来上がっています。
しかし、車が完成しても動かすことができなければただのガラクタです。車を運転するにはドライバーの運転能力が必要です。アクセルとブレーキとは何か、どのくらいの感覚で踏むと車が発進したり停止したりするのかという動作能力だけでなく、道を覚えたり、駐車場のスペースに合わせて停車したり、道路標識などのルールも覚えます。車の運転はライセンスが必要ですから、皆さん自動車学校に通って免許を取って初めて一般道で運転できるということです。
人事制度をこれに当てはめてみると、車=人事制度、ドライバー=評価者であるマネージャー、運転能力=マネジメント能力ということになります。デザイナーやエンジニアに当たる部分は自前でやる場合は人事部門、外部に発注する場合は我々コンサルタントとなります。
そして、車が欲しいと思ったら、お金を出せば買うことができます。F1に出ない人にF1カーを売るか?という問題があり、ただ眺めているだけのディスプレイ用であればそれもあり得ますが、人事制度はディスプレイするわけにはいきません。組織が小さかったり、運転者の能力が低かったりと、組織のレベルに対してオーバースペックだと判断した場合は、私は人事制度を売ることはできません。
ここでのポイントは、運転をしたことがない人は練習が必要なのと同様に、人事制度を扱うにはある程度のマネジメント能力を事前に実装して頂くことが必要だということです。卵が先か鶏が先かという話ではありますし、もちろん実践で習得できる部分も大きいと思います。もし運用していくうちにマネジメント力を向上させるという方針であれば、効果がでるまで3年は期間を見て頂きたいと思っています。

人事制度はマネジメント能力がある人が使うツール
「仕組み化」が語られるとき、その響きの中に「仕組みは自動的に動く」という感覚が含まれている気がしています。
それを指摘すると、もちろん皆さん「そんなことできないと思っているよ」という反応をされるので理屈ではご理解されているのですが、では具体的に仕組みをどのように使っていきますか?と問われると、手順や状況の場合分けがイメージがついていないのです。
私の考えとして、「人事制度はマネジメント能力の自動向上装置ではない」とお伝えしています。
人事制度は「評価制度」を以って回していきます。直属の上長と部下が目標設定→ミッション推進→評価を面談で握っておき、全社全体の相対評価を経て、確定した評価を本人へのフィードバック、という流れです。これを見ただけでもコミュケーションの機会が意図的に増えることが分かります。が、マネジメント能力のある方は必要工数だということを理解しているため、これらを既に実施しているのです。そこに標準的な実施プロセスである「仕組み」が導入されればさらにやりやすくなるでしょうし、自分なりのアレンジを加えてマネジメントすることもできます。しかし、実施していないケースでは、制度によってコミュニケーション機会を増やしたとしても、部下と何について話せばいいか分からず、雑談で終わってしまうのがオチです。
当たり前ですが、マネジメントは信頼関係によって成り立ちます。そして、信頼関係は日々の業務の中で作られます。ここで問題なのは、仕事ができる=信頼しているではないということで、現場から離れている上長(特に社長様が一手に評価を担う場合)は、評価者としての信頼という点では不足していることがあります。ここで次の手が打てているかが重要で、マネジメント能力のある人はその点に気付き、業務としての接点を日々持とうとします。これは、雑談や飲み会などプライベートな形式ではありません。上長自身の業務の手を止め、部下のために面談時間を確保し、対話やヒアリングを「業務として」行います。仕組みではなく、「上長の想いで」実施してくれるということに部下は嬉しいのです。つまり、面談の内容ではなく、面談時間を持ってくれる(自分を必要としてくれる)事実に信頼が発生するわけです。一方、多くの方はこの視点に気付けないか、気付いていても後回しにしています。ということは、いつまで経っても信頼は築かれないということです。このように、マネジメント能力は「仕組み」では自動的に向上しないことが分かって頂けると思います。
部下との信頼の大きさと上長のマネジメント能力は表裏一体です。逆に言うと、信頼を大きくする行動を上長が取っていれば、マネジメント能力は必然的についてくることになります。人事制度をうまく運用できず、悩んでいる方や企業様がいらっしゃいましたら、実は仕組みの外に要因があるかもしれないと考えてみてほしいと思います。





