2024年11月20日
■実績紹介
会社名:株式会社エコ・ブレーンズ
設立:2008年
所在地:静岡県静岡市
従業員数:11名
事業内容:補助金申請業
従業員への情熱がそこにあるか
以前から支援させて頂いている企業(株式会社エコ・ブレーンズ様)で評価制度を導入することになり、そのためにまずは人事ポリシーの策定と組織診断を実施することになりました。
人事に携わっていない方におかれては「人事ポリシーって何?」と疑問に思われるかもしれません。人事ポリシーとは、その会社の重要資源である「人」について、経営者や人事責任者の方がどのように考えているかを言葉にした方針のことです。採用基準、昇格基準、組織風土に合う人の特徴、人材育成のスパン、どこまで従業員を育てたいか、人材のためにどのようなリソースを割けるか、等々。この方針を人事施策の運用をする担当の方や場合によっては社内全員に共有していきます。
ルールを決める際には必ず価値観が必要です。これは会社ごと異なっていて当たり前で、事業によっても異なるかもしれません。私がコンサルとして入る際、この人事ポリシーが具体的になるまでお話を聞きます。そして、この「人事ポリシー」を明確にする前に制度を作ってしまうと制度がコピペのような薄っぺらいものになり、必ずと言っていいほど形骸化するか潰れてしまいます。
人事制度を導入する最終判断は、「経営者の方が従業員に対して情熱があるか」です。
これは組織の責任者でなければ発生しない熱意です。まずは経営者の方、そしてそれに準じて経営層の皆様・人事責任者が熱意をもっていることが大切で、この組織に対する熱を組織の中に伝播させていくことが人事制度の確固たる役目です。ということは、はじめの熱意がどれだけ高く熱することができるか、ここに運用の
制度は設計2割、運用8割と言われています。
ぴかぴかの制度を作ることは簡単で、人事経験などまるでない(正直はったりの)人事組織コンサルタントでも作ることだけでよければできます。しかし、それを長年にわたり運用していく、そして事業成果の伸びまで発展させていくことができるか、ここは実際に運用を経験していたコンサルタントでないと担当できないと思っています。
人事や組織の領域は、作業が目的化しやすいと思っています。つまり、本来手段だったはずの制度導入が目的になってしまい、社内稟議を通すことや制度を導入することが使命になりやすいため、本来の目的である「なぜこの制度を導入するのか」「導入した後にどのように変わっていきたいか」という本題の部分が薄くなってしまいます。
経営者の皆さん、ぜひ情熱を制度にぶつけて下さい。諦めかけている方、大丈夫です。
独自アンケートと対話で人事ポリシーを固める
人事ポリシーの固め方は、①必要資料(組織図や従業員名簿など)を提供頂く ②独自アンケートに回答頂く×2回 ③アンケートを基に当方とセッション×2回 という3段階構成になっています。
事業拡大のために走り抜けてきた経営者の方にとっては、組織についてここまで立ち止まってじっくり見直す時間がなかったと皆さん仰られます。入退社も激しいため、自分の企業であっても意外と実態がふわっとしている感覚もお持ちのようです。エコ・ブレーンズ様におかれましても、設立から10年経過していますが、社長様自身が人や組織に対して自分の価値観を初めて棚卸されたとのことでした。自問自答を繰り返すのでかなりタフな作業だったらしく、「なかなか大変だったよ」と仰っていました。でも、組織を大きくするうえではここが重要なのです。自分が今まで目をつぶっていた点、人の好き嫌いの傾向、従業員への考え方などを自覚するためには、少々つらくても一度見直してみましょう。
さらに、私とのセッションの中でどういう組織を作っていけばよいかという未来像は固まると思います。実は、こちらの企業様では経営層がおらず、実質社長様一人で経営を担われておりました。そのため、このような経営や組織の相談は社内の人間にはできない、話せなかったようで、そのようなときに私のような第三者の存在が役に立ちます。一度言葉に出してみる、それを聞いた相手からの質問に対してさらに考えてみる、このやり取りは一人ではできないので人事コンサルを導入して頂く一番のメリットです。
但し、人事ポリシーの確定は従業員アンケートと面談を実施してからになるので、このアンケートと対話は下準備ということになります。従業員アンケートと面談については、また次の記事でご紹介したいと思います。
↓一部アンケートサンプルのご紹介です
企業がどこまで成長できるかは人事ポリシーでわかる
エコ・ブレーンズ様において、当初の社長様の価値観は組織構造をフラットのままにすることでした。社長様が組織内をまとめていく方向でずっと維持していきたいというものです。私は、そのやり方もこの規模の企業ではありだと思います。人事ポリシーの策定で重要なのは「うちのチームをこのように動かしていきたい」という方針があることです。ということで、第一ステップはクリアされていると判断していました。
そこから、第二ステップとして「組織を大きくしていくことに本気を出せるか」ということを見つめなおして頂きます。
事業を大きくしたいという想いは社長様は皆さんお持ちだと思います。但し、エコ・ブレーンズ様のケースでいうと「組織を大きくしたい」想いはありつつも、リーダーを置いてマネジメント権限を委譲していくことに社長様の中で抵抗が最後まであるように感じました。見えていた従業員の様子が少なからず見えなくなるわけですから、不安になるもの当然だと思います。
しかし、私との2回のセッションの中で、当初は組織体制や人事制度を変更するつもりはなかったそうですが、私との会話の中で人事制度の必要性を感じるようになったとのことで、踏み切ることとなりました。
従業員は組織の人間関係に敏感です。しかも、表向きには「階層なんかないよ」と伝えられていればいるほど、「じゃあ平等なはずなのになぜあの人だけ?」とか「自分たちは何を評価されているの?」と経営層に疑念を抱きます。
このずれに本気で対応したいと思うか、組織を大きくして事業を成長させることに本気になれるか、答えがでるまでセッションは繰り返しますので、ご安心ください。焦らずじっくりお付き合いします。
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2024年11月08日
コロコロ変わるリーダー像
とある企業様に対して、リーダー教育のためのご提案をしています。そちらの企業様は、近年組織が100人規模に急拡大したことから、組織を盤石にするために大きな予算を割いてリーダー層に対して教育投資をされているとのことです。地方中小企業ですが、ここまでリーダー育成に投資しているのは非常に素晴らしい取り組みで、リーダー育成の難しさをよく理解されているんだなと思いました。
どこの企業でもリーダー育成に失敗された経験はあるかと思います。もしかしたら、ずっと失敗が続いてしまっていることもあるかもしれません。リーダー育成をしたいと考えた時、真っ先に手を伸ばしてしまうのが「研修」かと思います。リーダー層を集め、外部から講師を招き、1日かけた研修を半年に1回行う。定期的な意識付けにはなりますし、現場から離れて現在の自分のチームを見つめなおす時間を設けることは無駄ではないでしょう。
ただし、育成を本気で成功させたいと考えるならば、順番を考える必要があります。下記の図で示すとおり、リーダー育成はステップをすっ飛ばすとうまくいきません。まず、経営層が「どのようなリーダーを求めてるのか」を定義付けし、経営層や育成実行部隊の中で共通認識として持つところから始まります。実は、これが年によってコロコロ変わってしまい、選抜者が毎年のように変わってしまう企業も多数見受けられます。
リーダー育成失敗の本質の一つ目はここにあります。「経営層が数年我慢してでも育成したいリーダー像」を共通認識を持つ必要があります。具体的に人を名指ししてもいいでしょうし、要件をあげてもいいと思います。御社に一番マッチするリーダーの要件、他社の人材との差別化要件を経営層が自覚するということです。
ファーストステップの要件定義は、最初にがっちり固めてしまうのではなく、走り出してから少しずつ修正をかけてもいいと思っています。また、人材育成は長期戦ですので、社会的なスタンダードが途中で変わってしまうということもあるでしょう。実際、リーダーに求められる資質は変化しています。がむしゃらに日本人が働いていた時代は「業績達成」「予算達成」を求められ、効率が重要視されていました。一方的な部下への働きかけです。現在ももちろん売上向上はリーダーの責任ではありますが、それ以外にも部下との信頼関係構築・コミュニケーション・人材開発など、チームマネジメントが求められてきていると実感します。
リーダーになれる人材は限られている
リーダー育成失敗の本質二つ目は、リーダー候補人材のポテンシャルの見誤りです。
今までの日本社会は、適性がない人でも年功序列という形で何らかのポジションを与えてきました。適性よりもその会社に深く根差し、その会社について十分理解していることに重きを置いたのです。年功序列・勤続主義の昇給は労働者が勝ち取った権利であり、これに関しては日本に誇る素晴らしい制度であったと思います。しかし、現代は先述のとおりマネジメントの難易度が上がっている。業績を追いかけるだけのリーダーではチームは回らなくなってしまっています。
私の個人的な意見ですが、リーダーに向いているかどうかは入社時点である程度決まっていると思います。それは、性格面の影響が非常に強いからです。例えば、発言しない大人しいタイプの人がミーティングを引っ張っていけるようになるにはかなり時間がかかります。そもそも本人のやる気の要素も大きく、よく一般的に言われるように人を変えるのは非常に難しい。リーダーシップを渇望していない方にトレーニングをしても効果は薄いと思います。
そのため、リーダーになれる人材(どの程度のレベルのリーダーになれるか)を見極めなくてはいけません。ここで道を誤ってしまうのが、「リーダーに必要な素質」は「優秀な部下である素質」とは若干異なります。「上司の言ったことを正確に実行できる力」と「チームをけん引して目標を達成する力」は実は全く別物です。それは、経営者とNO.2人材の性格が異なることを見ればわかると思います。
しかし、「昇格」というものは現在のリーダーから評価されて初めて候補として名前が挙がります。つまり、「いい部下」が昇格していく仕組みになっています。となると、いつまで経っても参謀タイプとリーダータイプが見分けられません。実は、上位の役職まで上がってしまった人の中にも意外と参謀タイプの方も多く、リーダーシップを部下に発揮するのが苦手な方も見受けられます。
また、部下を評価する際、リーダーは自分と似た人を選びます。自分自身が成功事例ですから、成功事例に則ることは人選以外の場面でもやりがちです。このやり方をやっていると、現在のリーダーの下位互換のような方が選ばれていき、組織に新しい風を吹かせることはできません。VUUCAと呼ばれる先行き不透明なこの時代、現在のリーダーが未来のリーダーの最適解とは限りません。むしろ、現在の会社全体に不足している部分から逃げずに向き合い、補ってくれるようなリーダーを育てていくことをする会社が生き残っていくのでしょう。社外にアセスメント(人材評価・分析)を依頼することは一つの策になります。
いかに次のリーダーをポテンシャルから見極めるか。社外に目を向け、社会の流れに沿った人材をピックアップできるか。ここが2つ目の要となります。
「経験を積ませる」の責任は誰がもつ?
リーダー育成失敗の本質の最後は、責任の所在がないことだと思います。
リーダーの選抜が終わると、次はどのような経験を積ませるかを計画し、対象者に経験を付与していきます。経験の付与は2つのパターンがあります。一つ目は現在の部署で今よりも負荷のかかるプロジェクトのリーダーを任せる、もう一つは経験を積むことができる部署異動をさせる、この2つです。
そして、どちらにせよ「経験を積ませる」場合、定点観測をする人・部隊が求められます。育成失敗しているときは、この「経験を積ませる」ことをその部署の上長に丸投げしているケースがほとんどです。すると、誰が責任をもって育成するかが分からなくなってしまい、育成されている状況が放置されてしまうことが多々発生します。それで「育成がうまくいかない」と悩んでいるのは非常にもったいない。必ずプロジェクトとして推し進め、責任を受け持つ人・部隊を置きましょう。
これは1つ目の失敗の本質にもつながりますが、実際に育成を任される現場の上司に育成すべきリーダー像が共有されないことも大きく影響します。人は放っておいたら自力で成長することは難しく、上司からの手助け・引き上げがあって初めて階段を登れるようになります。しかし、育成する上司側から考えてみてほしいですが、ただ育成計画を立てさせたり、ただ育成を任せるだけではこの上司に当たる人は何もモチベーションがありません。さらには、上司自身が異動・退職してしまうと育成プロジェクトの熱意を引き継ぐことは難しいでしょう。そのため、育成協力を上司側に説明し、上司のミッションに組み込むようにします。上司自身が評価される仕組みも有効でしょう。
さらには、選抜者本人にも意識付けが必要です。どのくらいの期間で、ここまでレベルアップしてほしいと会社側が期待を示すのです。「経験」という機会を付与していること、その機会を無駄にしないでほしい旨は何度も伝えなくてはいけません。これはモチベーションを上げるための意識付けですが、モチベーションを下げない工夫も必要です。「経験を積ませる」の多くは泥臭いことを経験が多いかと思います。自分のやっていることを見ていてくれるのか、中長期的に評価してくれるのかが気になる点ですので、上司が誰に報告するのかが明確に見える方がよいでしょうし、例えば上司が変わるなど不安要素が強くなる状況でも外部からの定点観測があれば、安心することができます。
以上の内容は管理職育成を想定しています。中小企業は限られた従業員数で成果を出し続けなくてはいけません。①まず育成人材の目標(リーダー像)を据える ②リーダーを担える人材を見極める ③経験を積ませている間の定点観測 この3つの本質を間違えなければリーダーは必ず育成できると言えます。これらは自社で具体的な育成内容はまた記事にしたいと思います。
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2024年09月18日
<書籍情報>
■書名:組織デザイン
■著者:沼上幹
■出版社:日本経済新聞出版社
■どんな人向けか:組織の骨格を組み立てたい方、組織開発のハード面を学びたい方、分業と調整について学びたい方
事業成果を出す者は分業を制する
今回ご紹介する書籍は「組織デザイン」(沼上幹)です。
本屋さんで書籍を探してみると、組織の骨格や構造について端的にまとめられている本が少ないことがわかります(意外とこの分野の研究者が少ないのかもしれません)。そんな中、本書は新書であるにも関わらず組織構造について非常に詳しくまとめられています。本書の内容は、他の「組織論」や「経営論」の本に度々登場し、またか!?というほど引用されています。組織構造の章がまるまる本書の内容だったりするくらい超有名なので、すでにお持ちの方も多いのではないでしょうか。一冊読むだけで組織のハード面について網羅的に学ぶことができますので、組織開発初心者から玄人まで必読の一冊です。
さて、私がこの本を手に取ったきっかけは「組織構造」と「分業」の関連性に気づいたことにあります。現職で一部上場企業に勤めていますが、そこでは数年前から社長肝いりの企画が多数始動していました。社長指針を刷新したり、現場からボトムアップの形で小さな改善を活性化させるような取り組みを導入したりと、経営者が組織を活性化させようとしている雰囲気が社内に広まっていました。これは良い取り組みである一方、社長自身は自分の想いが社員の末端まで行き届いていないことを課題に感じていたはずです。人事として会社全体の組織改編を取り扱う中で、本当に今の組織形態が一番効率の良い形なのだろうか?人事として新しい形を提案できなくてよいのだろうか?と疑問を持つようになりました。
「組織構造」と「分業」は密接に関わっています。しかし、この対応を蔑ろにしているリーダーが意外と多く、チーム成果が出せていない組織ではこのどちらか(もしくは両方)がうまく機能していません。これは大所帯の企業も少人数チーム(私は3人からがチームだと思っています)も本質は同じです。崩れていく組織は布陣が曖昧なのです。なぜ従業員が自分の方針を理解してくれないのか、なぜ従業員は非効率に作業を進めてしまうのか、なぜ従業員同士がすぐもめてしまうのか…実は「組織構造」と「分業」が大混乱している証拠なのです。
最終的に作業や情報が滞りなく組織の末端まで流れていくことがめざすべき形です。そのために経営者やリーダーがやるべきことは何か。まずは「組織の骨格を再設計する」ことです。言い換えると、組織図を描き起こせるようなチームの状態を作ります。これは組織を牛耳る者しか担うことができません。いくらメンバーが組織の形を整理したいと思ってもできないのです。
企業はチームです。事業が伸びている企業は「分業」がうまく機能しています。自然発生的に機能しているのではなく、経営者が分業での成果の出し方を知っているのです。つまり、チームで成果を出す者は「分業」を制していると言えるでしょう。
ボトルネック工程を見つけ出せるか
本書は分業の理論的な考え方について学べる良書です。その中で読んでいて感じることは、分業は水のようだということです。作業工程を「フロー」と呼ぶくらいなので、まさに水の流れそのものです。
作業工程もスタート地点からゴール地点へと流れていきます。その過程で、詰まっているところ=一番時間がかかるところがあると途端にフローは滞ります。これをボトルネック工程といいます。皆さんもチームで仕事をする際に、「分担がうまくいかないな」と悩んでしまう箇所はないでしょうか。担当者同士がもめていたり、マンパワーが必要だったり、なぜこの作業をやっているかわからなかったり、そういう箇所や部署はまさにボトルネックなのです。
ボトルネック工程を排除することはできませんので、本書ではボトルネック工程の取り扱い方についても教えてくれています。
①ボトルネック作業があまり重要でない作業・部署だった場合 → 作業や存在自体をいかに小さくするか/注力するか/効率化するか
②ボトルネック工程が重要部署・重要作業だった場合 → 周りの作業を効率化し、いかにリソース(時間・優秀人材)を突っ込むことができるか
これができるかどうかだけでも組織の動きは全く変わってきます。本書で繰り返し述べられているのは、「ボトルネック工程と非ボトルネック工程を仕分けしてください」ということです。あなたの企業・あなたの組織が抱えている作業や案件を全て棚卸する必要があります。これは、片付けの手法と非常に似ています。片付けコンサルタントの近藤麻理恵(こんまり)さんが提唱されているこんまりメゾッドでは、まず部屋の中央に家の中にあるすべてのものを集めてきて、カテゴリごと(書類・衣服・本・小物など)にどれを残すか選別していくそうです。まさに、工程の棚卸もこの作業と同じことをします。
やり方が分かれば自分で片づけられる人もいれば、片付けコンサルタントに依頼して短時間で一気に片づける人もいます。「組織構造」と「分業」の整理も、短時間で一気に済ませてしまいたい場合は外部へ委託されることをお勧めします。ボトルネック工程が抽出できた後は、リソースの分配まで一気通貫で構築することが可能です。
また、片付けと組織整理の違いは、複数の人や部署が絡み合う点です。自分で決めればよいわけではなく、都度担当者のヒアリングが必要になります。何も聞かずに断捨離されたら現担当者は自分の人格を否定された気持ちになり怒り出す。つまり、気持ちにも配慮しながら進めなくてはいけない非常に繊細な作業です。事業を進めながら組織を整えるのは、難易度がかなり高いことが分かります。
事業が進んでいく中で組織について立ち止まれるか、飛躍するための準備期間を設けられるか。事業の成功は「組織構造」と「分業」を機能させる作業に掛かっている。本書を読んで痛感した気づきでした。
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2024年08月31日
対話が苦手な経営者は多い
経営者の皆さんに従業員とのミーティングに要している時間を伺うと、意外と確保されていないことに驚きます。
経営者の方は事業に情熱を持って取り組まれています。事業と向き合うことについては、得意な方が多いと思います。一方で、従業員への関わり、とりわけ「事業を展開するための対話」という点においていえば、見てみぬふりをしているパターンが多い気がします。
とある経営者の方は、従業員の生年月日と兄弟構成から、従業員全員の性格を占いで出してあると仰っており、占いで算出した性格表を手元に置きながら、従業員面談を実施しているとのことでした。そして、占いを導入した結果、「従業員面談の時間を削減することができた」と喜んでいらっしゃいました。占いを導入している賛否は置いておくとして、「対話時間を削減した」ことはいい方向にいかないのではないかと私は予測しています。
経営者の方から「組織がまとまらない」「同じ方向を向いていない」という課題はよく伺いますが、経営者からの発信時間が圧倒的に少なすぎることがあります。その要因は、①経営者の方が従業員に伝えたい理念や事業への想いを言葉にしていない ②対話に時間をかけても効果が得られなかったので辞めてしまった
この2点が当てはまると思っています。
もし、チームとして成果を出したい場合、分業は避けられません。つまり、従業員を信用し、自分がやるべき仕事を移譲していく必要があります。そして、組織を整え、自分の方針を従業員に落としていきます。これは経営者に近い経営層だけではなく、末端の事務員まで、組織の中にいる全員にいきわたらないといけないのです。リーダーからの発信と従業員とのすり合わせの時間は、栄養を全身に運ぶ血液と言ってもよいでしょう。
対話不足は栄養が行き届いていない状態です。陥ってしまったら、やるべきことの一つは「従業員のチーム化」。組織が成熟するまで待つのではなく、経営者主導でチームになるべき要素を整えていく方法です。詳しくは、ブログの別記事にまとめていますのでご参照ください。
リーダーシップとは「コミュニケーションのタイミングの上手さ」
対話不足の組織でやるべき対策、もう一つは「リーダーシップの見直し」に解決のヒントが眠っています。
事業を成功させる「リーダーシップ」、私の個人的な意見としては「=コミュニケーションのタイミングの上手さ」だと思っています。
「コミュニケーション」というと、雑談や朝礼からメール共有、ミーティングや面談までさまざまなツール・規模のものが対象になります。小さい会社で社長室がないような企業様だと、フロアで従業員といつも顔を合わせるし業務上のコミュニケーションは常に取っている、さらに飲み会は盛り上がるとなると「うちの会社は問題ないよ」と認識される方が多いのはないでしょうか。経営者様ヒアリングのためのアンケートにおいて、「コミュニケーション」の過不足を分析すると、大体の経営者は「問題ない」と回答されます。
しかし、もし感覚的に「従業員がついてきている感じがしない」と違和感を覚えている場合、残念ながらその感覚は当たっていると思います。
何が起きているのかというと、感覚で感じるということは従業員側が面と向かって言えない不満や要望が溜まっている状態です。言葉で言えないので態度に出している。はっきりとではありませんが、それを何となく経営者が感じ取っているのです。最近あの人なんかそっけないな、なぜかわからないけど反応が鈍いな、など。このようなノンバーバルな反応を察知している段階は、経営者と従業員の信頼関係にヒビが入っている状態です。
これが、言語化されて言葉で不満が出てくるようになると実は手遅れ一歩手前の状態です。言葉として不満が噴出する状態は、ヒビではなく断絶になります。こうなってしまったら、事業を前に進めたいと思っても組織を一から立て直す方に時間を掛けなければなりません。
つまり、「言葉として不満が出てきたら対応しよう」と思っていたら遅いわけですね。ここが、マネジメントが上手い(リーダーシップが上手い)方は、違和感をそのままにせず、自分の感覚を拾って対応しています。その違和感がいずれ大きな亀裂になることが分かっているからです。反対に、うまく組織を回すことができない経営者の方は、それをスルーしてしまっています。
私は、経営者の進みたい道を従業員全員に納得してもらったり、不満を持つ人を根絶する必要はないと思っています。そうではなくて、「経営者が何を考えているかわからない」ことに不満を持たれることを極力ゼロに近づける。これが、リーダーシップが上手くいく秘訣かなと思います。あの人の方が給料が高いのはなぜか、あの人の方が大きな案件を任されるのはなぜか、私の仕事がなくなるのではないか、そういう些細な不明点が聞けず、不信感につながるのです。
組織を定点観測していると、おのずとメンバーの違和感が見えてきます。経営者の方には「コミュニケーションのタイミング」、これをキャッチアップできる感覚を磨いて頂ければ、組織を変革していくことはできます。
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2024年07月24日
チームとして機能していないという経営の悩み
ご連絡頂いた企業様と無料相談を実施しています。
ご相談頂く内容で多いのは、「組織がまとまらない」という悩みです。「新しい事業に取り組みたいが従業員が納得していない」「同じ方向を向いている感じがしない」「自分一人で成果を出している」など。「チームで成果を出す」とは程遠い状況に経営者の皆様は悩まれています。
従業員数がまだそこまで多くはない中小企業におかれては、従業員と経営者との距離が近いため、より密接なやり取りが必要になります。従業員がついてきていない、というのが肌で感じ取れてしまうんですね。職人気質な風土だから、寡黙な性格の人が多いから、年配の人が多いからとは言え、経営者の方向性を従業員が理解している組織であれば、「まとまっている」「伝わっている」という感覚は感じることができます。逆に言えば、自分の組織に感じた違和感、残念ながらその感覚は当たっていると思います。
このような状況下で無理やり事業拡大を行ったり採用強化を図り組織を拡大させようとすると、たちまち組織が崩壊します。従業員の離職が止まらなくなったり、従業員との溝がより深くなってしまいかねません。このような時には、従業員サイド/経営者サイドの両方からの改善施策が必要です。今回は経営者サイドからの課題を挙げてみたいと思います。経営者の方は耳が痛いと思いますが、確認して頂ければと思います。
いくつか要因はありますが、大きなものとしては①リーダーシップの問題、②組織の問題があります。
①リーダーシップの問題については、ヒアリングの中で従業員と経営者の間に溝があることがよくあります。昨今様々なリーダーシップの在り方が提唱されていますが、経営者の方は私はリーダーシップとはコミュニケーションだと思っています。もっと具体的に言うと、”対象”と”タイミング”と”量”です。このどれか一つでもずれてしまっていると、リーダーシップは失敗します。つまり、組織を引っ張れている状況ではないということです。
経営者の方で、意外とリーダーシップの出し方に失敗してしまっている人がいます。優秀な経営者=優秀なリーダーとはならないのです。ここが事業と組織のバランスの難しいところです。いくら事業で面白いことが思いついたとしても、やりたい方向性が見つかったとしても、資金調達が上手くいったとしても、事業を膨らませるのは「人」なのですから、「経営者」は「リーダー」へシフトしていく必要があります。
こちらについては、別でブログとしてまとめたいと思います。
組織を強化するための仕掛けを仕込む
チームがまとまらない原因②「組織の問題」について解説します。
まず大前提として押さえて頂きたいのは、チームは個人の集まりです。従業員は入社したらすぐにチームの一員になるわけではありません。ここも意外と見落としがちです。目の前に事業としてやることがある、従業員がそこに取り組んでいる、これだけで安心してはいけないのです。
チームというものはどのように形成されていくのでしょうか。「組織設計概論」(波頭亮)によると、組織を構成する要素は下記の3つの”S”です。「Structure(組織骨格)」「System(制度・規則)」「Staffing(人員配置)」です。
・「Structure(組織骨格)」
組織図を作るというハード面の施策です。事業の内容や取り組んでいるミッションに従って、部署を分割するという水平的な構築と、リーダーを置き階層を作るという縦の構築があります。そのほかにも、特別な案件だったら社長直属にするとか、一つの部署に部下を何人まで配置するとか、考えることはたくさんあります。
・「System(制度・ルール)」
いわゆる人事制度(評価・報酬・目標管理など)を導入することです。経営者の考えと従業員の考えをすり合わせる方法は、人事制度しかないと思います。制度を導入しないと、組織はいつまでたっても個人のままです。組織を動かすために従業員にどのように働くことを求めるか、経営者の明確な発信が必要な施策になります。
・「Staffing(人員配置)」
配置・人事異動を実施するソフト面の施策です。組織体制を敷く一番のメリットは戦略の速やかな実行です。そのため、誰がどの役割を担うかによって、成果は大きく異なります。中小企業の限られた人的資源で事業をスピーディに推進するには、個人のプロフェッショナルスキルを最大限に活かすための分析とマッチングを実施し、定期的にメンテナンスを行う必要があります。
私は小さな組織ほど、この3つの”S”を押さえるべきだと思います。つまり、ずべこべ言わずにシステマチックな仕掛けを仕込んでしまい、組織を外側から完成させてしまうということです。
例えば、「Structure(組織骨格)」ですが、中小企業だと組織をピラミッド化することに抵抗感を覚える経営者の方も少なくないと思います。フラットな組織のまま行きたい、序列をつけたくない、など。確かに、そのやり方でうまくいっている間は私も無理に組織構造を変える必要はないと思います。
しかし、「組織がまとまらない」という違和感が現れ出したら要注意です。その違和感は水面上に現れている氷山の一角なのだと思います。水面下に潜む問題の核心は、「従業員が経営者の指示が聞けなくなってきている・鈍くなってきている」ことです。人事・組織開発は、経営者の方針や指示を組織の隅々まで流し込むためのシステムを作るための施策なのです。その過程で、従業員との信頼関係を作り直す必要があります。それについても上記の3つの”S”で網羅することができます。私が、小さい組織ほどなるべく早く導入してしまうべき、と述べている理由が分かって頂けるかと思います。
但し、この3つの”S”は組織に対して非常に客観的な視点が必要であることと、経営者自身が「人」や「組織」について時間を割かねばならないことは覚悟して頂きたいです。完璧なフルパックで対応する必要はないので、できる部分から簡単に対応することが望ましいと思います。
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